●朝4時からの試合を5時半から追っかけ再生で観戦した。グループEはすべてのチームに決勝トーナメント進出のチャンスがある状況で、ニッポン対スペイン戦とコスタリカ対ドイツが同時キックオフ。コスタリカ戦で敗れて意気消沈したが、ここでニッポンとコスタリカが勝利すればそろって勝ち抜け、スペインとドイツが敗退するわけで、ひそかにそんな事態を夢見ていた。なにせ大会前はだれもがグループEは2強2弱の無風区と決めつけていたのだから。
●試合は奇妙なくらいドイツ戦と似た経緯をたどった。ただしニッポンは最初からセンターバックを3枚にして3バック、いや、もう完全に5バック。左の長友はともかく、右のウィングバックと思われた伊東までディフェンスラインに吸収されている。中盤のキープレーヤー遠藤はベンチ、冨安もベンチで、谷口がセンターバックの一員として大会初出場。GK:権田-DF:伊東、板倉、吉田、谷口、長友(→三笘)-MF:田中碧(→遠藤)、守田-久保(→堂安)、鎌田(→冨安)-FW:前田大然(→浅野)。
●前半は一方的なスペインペース。開始早々に高い位置で奪って伊東がシュートを打つなどチャンスはあったが、以降はひたすら耐える展開。前半11分にスペインはモラタのヘディングシュートであっさり先制。完全に右サイドバックの位置まで下がる伊東。前田はプレスをかけるだけで疲弊する。センターバック3人が3人とも前半のうちにイエローカードをもらう厳しい展開。スペインの攻撃を凌いで、ようやくボールを奪っても、それが次につながらない。この相手にはもう一段階、技術に精度がないとボールが持てない。前半だけで3失点くらいしてもおかしくない内容で、ドイツ戦と同様、1失点で済んだのは運もあったと思う。
●後半、森保監督は長友を三笘に、久保を堂安に交代。前線からのプレスがはまり、後半開始早々の3分、右サイドから中に入った堂安の豪快なシュートが相手キーパー、シモンの手をはじいて同点ゴール。得意の形。これもドイツ戦の再現のよう。さらに後半6分、堂安のパスにファーサイドでゴールラインぎりぎりで追いついた三笘が折り返し、中央に走り込んだ田中碧が押し込んで逆転!……なのだが、これはゴールラインを割っていたように見えたので、VARでゴールが取り消されるはずだと思った。どう見てもラインを割っていたように見えたので、こちらも喜ぶことなく冷静に待っていたら、な、なんと、VARの結果ゴールが認められた! ええっ。が、これはもちろんビデオで確認したのだから判定は正しいのだ。肉眼ではラインを割っているように見えても、上から見ればボールの端がわずかながらラインに残っていたっぽい。ビデオ判定がなければ認めてもらえなさそうなゴールで、これはテクノロジーの恩恵。
●さすがのスペインも逆転されると前半がウソのように動きが悪くなり、しばらく一進一退の時間帯が続く。スペインは選手交代で攻勢を強め、ニッポンは遠藤、冨安といった守備のキープレーヤーを投入。終盤はふたたび一方的にスペインが攻める展開になったが、ニッポンは権田の好セーブもあって守り切った。まさかの逆転勝利、ドイツ戦の再現。ニッポンはグループ1位で決勝トーナメント進出を決めた。ニッポンのボール保持率は17.7%。これはワールドカップ史上、もっとも低い保持率での勝利なのだとか。かねてよりボールを保持するスタイルを「自分たちのサッカー」に掲げていたチームが、保持しないことの有利さを大舞台で証明するとは。
●コスタリカ対ドイツ戦も、前半終了時にはドイツがリードしていたが、後半にコスタリカが逆転する時間帯があった。そのわずかな時間、ニッポンとコスタリカが進出、スペインとドイツが敗退するという順位が実現していたのだが、ドイツが追い付き、さらに逆転してしまった。ドイツがしぶとく勝ってくれたおかげで、スペインは負けても2位通過できるという状況だったので(しかも2位通過のほうが後の対戦相手が楽)、最後の最後はスペインも無理をする必要はなかった。もっとも、ピッチ上の選手たちはコスタリカが逆転したことも、ドイツが再度逆転したことも知らなかったかも。逆にドイツの選手たちは、まさかニッポンがスペインに勝つとは思っていなかっただろうから、勝利したのに敗退が決まったことをすぐには受け入れられなかったかもしれない。
ニッポン 2-1 スペイン
娯楽度 ★★★★★
伝説度 ★★★★★