●最近、夜更かしはしない主義だったが、ライブでテレビを観る。午前0時からの試合だけど、2時には終わってくれないんすよね、延長PK戦に入ると。だが、試合中に眠くなる瞬間は訪れなかった。決勝トーナメント一回戦、ニッポンは前回準優勝のクロアチアと対戦。クロアチアは37歳のモドリッチが中心選手として健在。団結力がありチームとして戦うという点で、ニッポンと似たタイプ。優勝も狙える強豪ではあるが、個の力ではグループステージで戦ったスペインやドイツほどではない。
●だから、もしかすると森保監督は4バックに戻して、多少攻撃的な布陣にするかも、と期待していた。センターバックの板倉が出場停止で、右サイドバックの酒井が初戦以来ケガから復帰しているので、4バックだとセンターバックを吉田と冨安、あるいは冨安がまだ万全でなければ吉田と谷口で組める。その場合は左ウィングに三笘を先発させるかも……。が、森保監督は現状で機能している布陣を優先する方針で、3バック(5バック調)を採用。GK:権田-DF:冨安、吉田、谷口-MF:伊東、遠藤、守田(→田中碧)、長友(→三笘)-堂安(→南野)、鎌田-FW:前田(→浅野)。序盤は5バック調だったので、ほとんどの時間帯でクロアチアにボールを持たれる展開。相手が攻撃に人数をかけていないのに引きすぎだと思ったが、次第に両サイドの長友、伊東が高い位置まで上がるシーンが増えて、ニッポンもボールを持つ時間が増えるようになる。クロアチアも慎重。しかし前半43分、ニッポンのショートコーナーから堂安が入れたクロスにファーサイドで吉田が折り返したところに、すばやく反応した前田が蹴り込んで先制。とてもよい時間帯の先制点で、クロアチアとしては大誤算だったはず。
●しかし後半10分、クロアチアは右サイドからロブレンがクロスを入れると、これをペリシッチが頭で合わせて同点ゴール。サイドを深いところまでえぐられたわけではなく、なんでもないクロスだったのだが、クロスを上げる選手にプレスをかけなかったため、すごい精度のボールが飛んできてしまった。これはスペイン戦の失点とまったく同じ。この日の悔やまれるプレーはここだけ。その後、一進一退の状況が続き、途中出場の三笘が長い距離をドリブルして惜しいシュートを放つなど見せ場は作ったが、得点には至らず。途中出場の浅野、南野もインパクトを残せない。どちらがゴールを奪ってもおかしくない状況だったが、延長戦に入ると互いにリスクをとらずペースダウンして、PK戦へ。
●ニッポンは統計的に有利な先攻だったが、いきなり南野、三笘が続けてセーブされ、浅野は決めたが、4人目の吉田までセーブされてしまう。枠を外すのではなく、3人もキーパーにセーブされてしまったのだから、これはもうクロアチアのキーパー、リバコビッチの鬼セーブを称えるしかない。クロアチアはワールドカップでもEUROでもいつも延長戦までもつれこんでいる印象があり、相手の型にはまったという気もする。2010年南アフリカ大会のパラグアイ戦と同じく、ニッポンはPK戦にベスト8を阻まれた。PK戦の本質は抽選であり、試合の勝敗としては引分けなので、クロアチアに「負けた」という感覚はない。「勝てなかった」というのが実感。こうなったらクロアチアに優勝してほしい。モドリッチはすでに伝説だが、37歳で優勝したら新たな伝説が誕生する。
●ニッポンの今大会、冨安を筆頭に遠藤、酒井などコンディション面でやりくりが苦しかった。絶対的エースと期待された南野の今シーズンの不調も誤算。谷口、長友にここまで出番が回ってくるとは。守田も本調子には遠い様子。それでもトータルでは史上最強チームだったと思う。5人交代制、VARといった新しいルールを味方につけた戦いも印象に残った。そして、個々の選手が普段から欧州の高いレベルでプレイすることが強化の王道だと改めて感じるとともに、その礎となるのはJリーグのレベルアップであり、中田英寿のいにしえの名言「Jリーグもよろしく」は今なお真実。
●その後のもう一試合はブラジルが韓国に4対1で圧勝。これで決勝トーナメントに進出したオーストラリア、日本、韓国がそろって敗退。明日、モロッコがスペインに勝たない限り、ベスト8は「欧州選手権+ブラジル・アルゼンチン」という毎度おなじみの顔ぶれになって、ここまでの波乱などきれいさっぱり忘れられてしまいそう。
ニッポン 1(PK1-3)1 クロアチア
娯楽度 ★★★★
伝説度 ★★