December 19, 2022

アルゼンチンvsフランス 最後に訪れた戴冠式 ワールドカップ2022 決勝

アルゼンチン●一か月に及んだワールドカップ2022カタール大会もついに決勝戦。キックオフが日本時間の24時で意外にも早い時間帯。暑さは?と思ったら、12月も後半に入りさすがのカタールの空気もひんやりとしてきた、らしい。アルゼンチン対フランス、そしてメッシ対エムバペの決勝戦は、決勝戦らしからぬスペクタクルになった。
●アルゼンチンは4-3-3の布陣。34歳ベテランのディ・マリアを左ウィングで先発させた。本来の右ではないが、右にはメッシがおり、中央に運動量豊富なアルバレスがいる。フランスは試合前、感染症で体調を崩す選手が多かったと言うが、ふたをあけてみればどうということもなく、4-3-3の布陣。前評判では(自分の予想でも)完成度の高いフランスが押す展開になると思われていたが、序盤からアルゼンチンがハイテンションで立ち向かい、なんとフランスが守勢に回る。ディ・マリアは動きにキレがあり、持ち前の技術の高さで左サイドを支配、対面するクンデをちんちんにする無双ぶり。そのディ・マリアが左サイドからカットインしてエリア内に切れ込んだところをデンベレが後ろからひっかけてPK。誘って取ったPKという感も。PKをメッシがキーパーの動きを見て落ち着いて決めて前半23分にアルゼンチンが先制。さらに前半36分、アルゼンチンは自陣から流れるようなパスをダイナミックにつなぎ、右からマカリスターが入れたラストパスを走り込んだディ・マリアが決めて2点目。ディ・マリアの大活躍で2点リードする予想外の展開になった。フランスはデシャン監督が前半41分のタイミングでデンベレとジルーを下げて、コロムアニとテュラムを入れる早い決断。これでテュラムを右サイドに置き、ここまで目立たないエースのエムバペを中央に置く布陣に。
●前半はそのまま終了し、後半半ば、アルゼンチンはディ・マリアを下げて、4-4-2のブロックで守る態勢に入る。これで試合が終わると思えたが、後半34分、フランスはコロムアニがオタメンディに倒されてPKを獲得。エムバペが決めて1点差。その直後、エムバペがテュラムとのワンツーで抜け出して、浮き球を美しいボレーで叩き込んで同点弾。あっという間に追いついてしまった。
●2対2のまま延長戦に突入すると、延長後半3分、アルゼンチンはゴール前の細かいパス交換からラウタロ・マルティネスがシュート、キーパーのロリスが弾いたところをメッシが蹴り込んでゴール。今度こそ試合が決まったと思ったが、延長後半13分、フランスは相手のハンドから得たPKをエムバペが決めて3対3の同点。これはシュートのブロックに入ったモンティエルの腕にたまたま当たってPKとなったもの。試合は盛り上がるが、判定としてはつまらない。こんなPK、1点ではなく0.5点にしたいくらいだ。
●延長戦の終盤に両者ビッグチャンスを迎えたが決まらずPK戦に。コイントスで、フランスが統計的に有利な先攻を得たものの、2本目、3本目を失敗。全員成功させたアルゼンチンが勝者となった。そもそもPK戦は「試合は引分けたが、先に進む勝者を決めるためのもの」と考えると、決勝戦にPK戦が必要なのか疑問も感じるのだが、とはいえ両者優勝では盛り上がらないのもたしか。それにしても、この試合もそうだが、大会全体を通して「PK」が主役になりすぎているとは思う。あと、PKを下に蹴る選手が多かったのも印象的(ニッポンもそうだったが)。一時期、上に速いボールを蹴れば読まれても止められないとして、上に蹴る選手が増えたと思っていたが、今は明らかに下が多い。きっと根拠があるのだろう。ともあれ、ハンドによるPKと、PK戦はルール再考の余地があると思う。
●内容的にもアルゼンチンが勝者にふさわしいと思っていたので、PK戦に勝ってくれてよかった。メッシが自身に唯一欠けていたタイトル、ワールドカップ優勝を手にしたのもうれしい。35歳なので最初で最後の優勝だろう。メッシはマラドーナも含めて歴史上最高のプレーヤーだと思うが、あまりにも傑出しているがゆえに、不合理な批判にさらされることが多かった。重圧から解放され、セレモニーで家族と一緒に喜びあう姿が印象的。そして、なぜかセレモニーに加わっているフランスのマクロン大統領。はっきり言って、場違いだ。

アルゼンチン 3(PK4-2)3 フランス
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★★