December 20, 2022

鈴木優人指揮読響のベートーヴェン「第九」

東京芸術劇場
●今回のワールドカップについてはまた改めて総括するとして、遡って16日は東京芸術劇場で鈴木優人指揮読響のベートーヴェン「第九」。BCJの「第九」を聴けなかったので、今年初「第九」。今年の読響「第九」は、第1部として鈴木優人のオルガン独奏がある。「第九」にオルガン曲を組み合わせるのは珍しくないが、指揮者自らが演奏し、しかも毎公演ごとにバッハの異なる曲を演奏するという趣向は、ほかの人にはまねできない。初日となったこの日は対照的な曲調の「神のひとり子なる主キリスト」BWV601と「トッカータとフーガ」ニ短調BWV565を独奏。久々に芸劇のオルガンのクラシック面を見たかも。オルガン曲の後、休憩が入るというアナウンスに客席が「え、入るの?」みたいな感じでどよめいたのがおかしかった。
●「第九」で感じたのは鈴木優人と読響の一体感が増しているということ。逆説的だけど、それゆえに読響サウンドの「第九」を聴いたという実感。指揮者の作り出す清新な造形と、オーケストラ持ち前の骨太のサウンドが組み合わさって、集中度の高い「第九」に。「第九」のヴィオラってこんなにきれいなんだという発見も。驚いたのは第3楽章の後で、ステージ上に合唱団も独唱者もいないのに、そのまま第4楽章に突入してしまった。独奏者が出番に合わせて入ってくる演出はなんどか見たことがあるけど、まさか合唱も? しかもピッコロとか打楽器とかも人が足りないような。と、思っていたら、オーケストラの歓喜の主題とともに合唱団、奏者たちが入場。なんだか入学式とか卒業式みたいだなと思いつつも、予想外の展開を楽しむ。声楽陣はキャロリン・サンプソン、オリヴィア・フェアミューレン、櫻田亮、クリスティアン・イムラーの独唱と新国立劇場合唱団。終楽章は熱気にあふれ、コーダで一段と盛り上がった。師走のスパートに向けてエネルギーを注入してもらう。