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January 4, 2023

「メキシカン・ゴシック」(シルヴィア・モレノ=ガルシア著/青木純子訳/早川書房)

●年末年始に読んだ本、その1。シルヴィア・モレノ=ガルシア著「メキシカン・ゴシック」(早川書房)。ホラー小説からは遠ざかっていたが、英国幻想文学大賞ホラー長篇部門(オーガスト・ダーレス賞)、ローカス賞ホラー部門、オーロラ賞を受賞した「ホラー三冠王」というふれこみにひかれてゲット。序盤は古色蒼然としたゴシック・ホラーで、「えっ、まさかこの調子でずっと続くの?」と心配になったが、書名通りメキシカン・ゴシックであることがミソ。主人公は都会の裕福な家庭に生まれ、学者志望の知的な若い娘でメスティーソ(混血)。この主人公が外界から孤立した幽霊屋敷みたいなおどろおどろしい館に招かれるのだが、こちらの幽霊屋敷側に住むのはイギリスからやってきた伝統を重んじる旧弊な白人一家。ホラーの体裁をとりながらも、ヒロインが戦っている相手は家父長制であり白人優位主義であり植民地主義なのだという図式が見えてくると、これが今日の小説であることが腑に落ちる。
●もっとも全体のトーンは案外カジュアルで、格調高いゴシックスタイルかと思いきや、進むにつれて荒唐無稽な50年代SFホラー調になっていくのがおかしい。同時にこれは真菌類小説でもあって、人間がキノコやカビに対して抱くうっすらとした恐れが反映されている。その点では東宝特撮映画「マタンゴ」に通じるかも。ヘンなモノ食わされる感にモゾモゾする。

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