●11日は「トッパンホール ニューイヤーコンサート 2023」。ニューイヤーコンサートと銘打ちながら辛口硬派のプログラムを用意するのがトッパンホール。プログラムは前半がコダーイの無伴奏チェロ・ソナタ(ユリアン・シュテッケル)、後半がバッハ~シトコヴェツキ編の「ゴルトベルク変奏曲」(山根一仁、原ハーゼルシュタイナー麻理子、ユリアン・シュテッケル)。コダーイの無伴奏チェロ・ソナタ、正月ボケを吹き飛ばしてくれる曲として、1月中旬のニューイヤーコンサートにはぴったりかも。大変すばらしい。この曲、やや晦渋な作品だと思っていたけど、生で聴くと思いのほかパワフルで、シュテッケルのチェロは雄弁。難曲を難曲と感じさせない洗練された演奏で、なおかつスケールが大きく、気迫のこもった熱演。
●普通ならこれで前半終了だが、ここでサプライズあり。なんと、シュテッケルに師事した岡本侑也が登場して、チェロの師弟デュオが実現。パガニーニ~トーマス・デメンガ編の「モーゼ幻想曲」を演奏してくれた。岡本の潤いのあるまっすぐな美音と、シュテッケルの深く陰影豊かな音色によるヴィルトゥオジティ合戦。ぜいたくなお年玉。
●後半の弦楽三重奏版「ゴルトベルク変奏曲」は、ドミトリ・シトコヴェツキの編曲。シトコヴェツキ本人による最初の録音が出た頃、どう考えても弦楽器向きの曲ではないし、ひとりで演奏する曲を3人で演奏するのは密度が薄すぎてウケないよなあ……と思ったものだが、それは大まちがいで、以後多くの奏者たちに愛奏され、こうして何十年も経っても人気が衰えていない。もはや新たなスタンダードなのかも。で、編曲に対する印象は今もそう変わらないのだが、実演で聴くと原曲とはまた違ったリラックスして聴ける楽しみがあるのだと知る。特にテンポの遅い変奏では弦楽器ならではのしっとりとした味わいあり。
January 12, 2023