February 7, 2023

デヴィッド・ラングのオペラ「note to a friend」

デヴィッド・ラング note to a friend
●4日は東京文化会館小ホールでデヴィッド・ラング作曲&台本のオペラ「note to a friend」。小ホールで歌手は一名のみ(セオ・ブレックマン)、これに役者一名、弦楽四重奏が加わる一幕もの約60分の新作。演出はレジェンド、笈田ヨシ。すでに1月にニューヨーク公演が行われている。オンライン記者会見の模様をレポートした際にも記したように、題材となっているのは芥川龍之介作品で、主に「或旧友へ送る手記」および「点鬼簿」。オペラの題は「note to a friend」となぜか英語表記で、日本語表記がほしかった気もする。
●デヴィッド・ラングの音楽を最初にライブで聴いたのは「ラ・フォル・ジュルネ」の公演だったと思う。簡潔で反復的で、透明感があり、静謐さのなかにほのかな悲しみやノスタルジーを湛えたエモーショナルな作風だと記憶しているが、その印象は今回のオペラでも変わらない。60分の間、ほとんどの時間帯で身振りの小さな音楽が続く。静けさいう点ではドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」をもしのぐ。演奏は見事で、成田達輝、関朋岳、田原綾子、上村文乃による弦楽四重奏は望みうる最上のものだろう。オペラ歌手ではないので、セオ・ブレックマンはマイク付きの歌唱。リリカルな声。
●身振りが小さいのは音楽だけではなく、舞台上も同じ。「羅生門」スタイルに触発された、自殺した男が友に語り掛けるという趣向。物語的というよりは詩的で、オペラというよりは連作歌曲風。テーマは自殺。記者会見では作曲者も演出家もこれを悲劇的なものとはとらえていないという話があった。そこは自分には理解の及ばない領域で、まっすぐにこのテーマに向き合うことは難しい。
●約60分だとあっという間。まだこれから「トリスタンとイゾルデ」の一本くらい聴けそうなくらい(ウソ)。