●16日はサントリーホールでふたたびヤクブ・フルシャ指揮NHK交響楽団。プログラムはドヴォルザークの序曲「フス教徒」、シマノフスキの交響曲第4番 「協奏交響曲」(ピョートル・アンデルシェフスキ)、ブラームスの交響曲第4番。先日の「ダブル・シンフォニック・ダンス」もよかったが、それを上回る充実度。一曲目の「フス教徒」、知らずに聴けばスメタナ「わが祖国」パート2といった趣。「わが祖国」の第5曲「ターボル」と第6曲「ブラニーク」もフス教徒が題材になっているが、共通する主題が出てくるのみならず、闘争的な楽想やシンバルが活躍するオーケストレーションなども似ている。「わが祖国」でスメタナだと思って聴いていたものの何割かは汎ボヘミア成分なのかも。
●シマノフスキの交響曲第4番 「協奏交響曲」はたぶんライブでは初めて。名は交響曲だけど、実質的にはピアノ協奏曲。ひたすらカッコいい。意外にも簡明さや透明感があってバルトークのピアノ協奏曲第3番を連想するが、こちらのほうが先。ラヴェルの2曲のピアノ協奏曲を思わすところも。民俗的でもあり古典的でもありモダンでもありのバラエティパック風味。第3楽章は地中から怪獣が出てきそう感があり。クライマックスへと向かう反復的パッセージの輝かしさときたら。熱い。アンデルシェフスキは確信と共感のソロ。年輪を重ねても雰囲気はあまり変わらない人だなと思う。アンコールはバルトークの「シク地方の3つの民謡」。絶品。
●後半はブラームスの交響曲第4番。4曲の交響曲のなかでもっとも好きな曲だけど、ライブでは期待外れに終わることも多い難しいレパートリーという認識。が、フルシャとN響は本格派の見事なブラームスを披露。全体の造形は20世紀の伝統にのっとったもので、粘るところは粘る、締めるところは締めるで、寂寞とした情感と切れ味の鋭さを両立。先日の演奏でも感じたけど、このコンビのサウンドは明るめだけど重量感がある。特にこの日はホルンセクションが強めに鳴っていた。楽員退出後も拍手は続き、フルシャとコンサートマスター白井圭のふたりで、デュオ(?)カーテンコール。
February 17, 2023