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March 1, 2023

ベルリン・フィル2022/23シーズンのデジタル・コンサート・ホール備忘録

●しばらくぶりにベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール(DCH)にアクセス。2022/23シーズンから興味のあるものをいくつかピックアップして観てみた。DCHは「ひとつのコンサートをしっかり聴こう」と思うと結局まとまった時間がとれなくてなにも観れないので、割り切って曲単位で拾い聴きしている。
●それにしても直近のベルリン・フィル、知らない人が多い! えっ、いつの間にこんなに?と思い、公式サイトのメンバー表を確認してしまったが、こちらを見るとそんなに変わっていない。ゲストが多いのか、試用期間中の人なのか。あと、管はだんだんベテランぞろいになってきたなと感じる。
●以下、備忘録。まずはサロネン。今シーズンのコンポーザー・イン・レジデンスになっている。委嘱新作はまだ聴いていないが、とりあえずバルトークの「中国の不思議な役人」を。もうキレッキレ。驚異的に若々しいサロネンもさすがに爺の領域に入っているが、それでもカッコいい。フルートはジャコー。
●ヤノフスキ。彼が指揮台に立つとベルリン・フィルも一段ピリッとする(ような気がする)。アムランの独奏でレーガーのピアノ協奏曲を演奏しているのだが、これが凄まじい。この曲、あまりにブラームスのピアノ協奏曲第1番の影響が濃厚だと思っていたが、そんなことがまったく気にならないレベルの名演。魂のレーガー。あと、ヤノフスキが振るとベルリン・フィルもヤノフスキの音になる(N響も)。
●ペトレンコ。ベートーヴェンの交響曲第8番を聴く。すぐれた演奏だが、なにか物足りない。沸き立つようなものがないというか、公開リハーサル的な印象を受けてしまう。ペトレンコの別の演奏会でのクセナキス「刻印」はすばらしかった。荒々しい曲なのにすごく耽美な音が鳴るベルリン・フィル。続いて演奏されたベルント・アロイス・ツィンマーマンの「1楽章の交響曲」もよい。油断してぼんやり聴いていたら、どんどんすごいことになって最後は茫然。
●ブロムシュテットのベートーヴェン交響曲第7番。N響登場時と同じように椅子に座っての指揮。さすがの鉄人も体があまり動かせなくなっている。かなりのところ、自走式ベルリン・フィルの演奏で、これは少し残念だと思っていたら、第4楽章になると火がついて燃えるようなクライマックスを作り出した。巨匠への敬意が熱狂として具現化。
●ハーディング。今月の演奏会が「海」をテーマにした見事なプログラム。やはりこの人はおもしろい。シベリウス「大洋の女神」、リゲティ「ロンターノ」、ブリテン「ピーター・グライムズ」より4つの海の間奏曲、リゲティ「アトモスフェール」、ドビュッシー「海」。リアル海の間にリゲティの響きの海が挟まれている。演奏のクォリティも驚くべき高さで、リゲティやドビュッシーの精緻さは並のオーケストラでは聴けそうにない。ブリテンも泣ける。弦がすごい。別の日の演奏会でのシュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」も聴きごたえがあった。合奏能力の高さにファンタジーが加わっている。以前のハーディングはベルリン・フィルの前だとなんだか窮屈そうな印象を受けたけど、今はまったくそんなことはなく、確信を持った指揮ぶり。最高。

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