●10日はサントリーホールでバッティストーニ指揮東京フィル。プログラムはベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、カゼッラの狂詩曲「イタリア」、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(石丸由佳)。全編バッティ節による痛快な一夜。語り口の巧みさにすっかり魅了される。「ローマの謝肉祭」はいつだってスペクタクル満載の曲だけど、この曲にこれほど歌の要素を感じたことはなかった。そういえばこれはイタリア体験に基づく音楽だったと今さら思い出す。カゼッラの「イタリア」はあの「フニクリ・フニクラ」が臆面もなく用いられる快作。リヒャルト・シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアから」と双璧をなすクラシック音楽界二大フニクリ・フニクラ名曲。ほかにもイタリア民謡がいくつも登場する。「ソーラン節」「炭坑節」「八木節」……あ、それは違う曲だった!ともあれ、バッティストーニがぐいぐいとオーケストラをドライブして、エキサイティング。頭のなかに「鬼のパンツ」がこびりついて離れない。鬼に金棒、バッティに指揮棒。
●メイン・プログラムのサン=サーンス「オルガン付き」も大変な盛りあがりぶり。サウンドは鮮やか、たっぷりと歌うところは歌い、キレもよく、ブラスが輝かしい。壮麗ではあるけど、白眉は緩徐楽章相当の第1楽章後半か。石丸由佳のオルガンともども、ゴージャスなばかりではなく情感豊かな味わいが印象に残る。終演は早めだったが密度が濃かったのでお腹いっぱい。理想的。
March 13, 2023