●11日は東京芸術劇場で「吉松隆の〈英雄〉」。原田慶太楼指揮東京交響楽団によるオール吉松隆プログラム。前半に「鳥は静かに……」、鳥のシンフォニア「若き鳥たちに」、キース・エマーソン&グレッグ・レイク~吉松隆編曲の「タルカス」、後半に交響曲第3番。珍しく芸劇で東響を聴くことになったが、これは東響の主催公演ではなく、ジャパン・アーツ/日本コロムビアの主催。原田指揮東響による渾身の演奏で、吉松作品にまた新たな命が吹き込まれた。
●一曲目、弦楽合奏による「鳥は静かに……」の儚さが沁みる。鳥のシンフォニア「若き鳥たちに」は吉松版「青少年のための管弦楽入門」といった趣。パートごとに立奏する場面があったが、まさかチェロまで立つとは。「タルカス」は以前にも藤岡幸夫指揮東フィルで聴いたことがあったような……と一瞬思ったのだが、ライブで聴いたのは佐渡裕指揮東フィルだった。そう考えると、すごい人気曲。原田&東響はテンションマックスでキレッキレ。交響曲第3番は堂々たる交響曲で、すさまじい高揚感と祝祭感。終楽章の5拍子攻めが強烈だった。
●最後に吉松さんがマイクを持って登場して挨拶。客席はよく入っていた。昔から吉松ファンはたくさんいたと思うんだけど、原田慶太楼効果でさらに新しい聴衆を獲得しているはず。こうして若い指揮者がとりあげ、また聴衆が増えて、というサイクルをくりかえすことで、作品が「名曲」の仲間入りを果たすのだろう。わたしたちはそのプロセスを現在進行形で体験している。
March 14, 2023