●30日は東京文化会館で東京・春・音楽祭2023、リッカルド・ムーティ指揮のヴェルディ「仮面舞踏会」(演奏会形式)。オーケストラは精鋭ぞろいの東京春祭オーケストラ。コンサートマスターを長原幸太が務め、在京オーケストラの首席奏者やソリストたちが集う。フルートにはフィンランド放送交響楽団首席奏者の小山裕幾の姿も。合唱は東京オペラシンガーズ。第1幕冒頭から終幕に至るまで細部までみっしりと彫琢されたムーティ色のヴェルディ。引きしまったサウンドで、ムーティの一挙手一投足に鋭敏に反応する。劇場ではまず体験できそうもないオーケストラ芸術としてのオペラを堪能した。こんなに完成度の高い音楽、普通は聴けない。なんというか、オペラをあくまで劇場の営みとするならば、ここまでリハーサルで鍛え上げられたオーケストラはフィクションみたいな存在なんだけど、一方でこれが本物のヴェルディなんだという半ば矛盾した思いを抱いてしまう。
●歌手陣はリッカルドにアゼル・ザダ、アメーリアにジョイス・エル=コーリー、レナートにセルバン・ヴァシレ、ウルリカにユリア・マトーチュキナ、オスカルにダミアナ・ミッツィ、シルヴァーノに大西宇宙他。ヴァシレのレナートが強い。ミッツィのオスカルは軽やか。カーテンコールでお腹の赤ちゃんを撫でて母子ともに喝采を受けていた。祈安産。ぞくぞくするような合唱も大吉。
●ムーティって81歳なのか……。信じがたい。一頃より体のキレが増しているのでは。
●「仮面舞踏会」はこの後、1日にムーティの指導を受けた若い音楽家たちによる公演もあって、そちらも楽しみにしている。「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.3」の一環。指揮はアカデミーの受講生4人が分担して受け持つそうなのだが、そのなかにベルリン・フィルの首席クラリネット奏者、アンドレアス・オッテンザマーの名前がある。
March 31, 2023