April 4, 2023

東京・春・音楽祭2023 「東博でバッハ」 川口成彦(フォルテピアノ)

夜の東博
●3日は東京・春・音楽祭のミュージアム・コンサート「東博でバッハ」。先日は同シリーズを法隆寺宝物館エントランスホールで聴いたが、今回は平成館ラウンジで川口成彦のフォルテピアノ。ジルバーマンとタンゲンテンフリューゲルの2台のレプリカを曲によって弾き分けるという趣向。バッハとその息子たちの作品からなるプログラムで、前半にバッハの前奏曲とフーガ イ短調BWV895、イギリス組曲第1番イ長調、C.P.E.バッハのヴュルテンベルク・ソナタ集より第1番イ短調、後半にバッハの幻想曲とイミタツィオーネ ロ短調BWV563、協奏曲ロ短調BWV979(トレッリのヴァイオリン協奏曲にもとづく)、フランス組曲第5番ト長調、J.C.バッハのソナタ ハ短調op.5-6。曲間のトークでジルバーマンの楽器にアクシデントがあり、弦の張力をこれ以上あげられないということだったかな、現代の標準ピッチより全音低いヴェルサイユ・ピッチで演奏するというお話があった。
●どちらの楽器にも手で操作するストップみたいなのがあって、曲の切れ目で音色をがらりと変えることができる。とてもきらびやかだったり、くすんだ色調があったりと、すこぶるカラフルで、万華鏡をのぞきこんでいるような気分。どの作品も大いに楽しんだけど、ハイライトはエマヌエル・バッハのヴュルテンベルク・ソナタ第1番か。くらくらするような華麗さ。この曲って、昔グールドがピアノで録音した曲だったっけ? あの頃はモダンピアノの一択しかなかったと思うんだけど、時代は変わり、作曲家像も変わる。最後に演奏されたクリスティアン・バッハもよかった。エマヌエルに比べると正直ピンとこない作曲家だと思っていたけど、この曲はおもしろい。モーツァルト的でもあり、父バッハの香りも混ざっていたりする。アンコールはショパンのフーガ! 歴史をジャンプして外挿するみたいな選曲。最高のおみやげ。
●この平成館ラウンジ、床が石造りで音が反射する一方、天井はほとんど音の返りがないところで、モダンピアノだとモゴモゴとこもった感じの響きになるんだけど、フォルテピアノだと軽く低音ブーストがかかったみたいになってほどよいかも。