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April 17, 2023

パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団のリヒャルト・シュトラウス・プロ

パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団
●15日はNHKホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響。プログラムはリヒャルト・シュトラウスの「ヨセフの伝説」交響的断章と「アルプス交響曲」。「ヨセフの伝説」はなかなか聴くチャンスはない……のだが、もともとのバレエ音楽はパパ・ヤルヴィがかつてN響で指揮したのを聴いているのだった。今回はそのバレエ音楽をもとにした交響的断章ということで、もっとコンパクトな楽曲ではあるのだが、やっぱり似たようなことを感じた。音楽は華麗で官能的で、部分部分で見ると他のシュトラウスの有名曲となにが違うのかと思うけど、全体を眺めると一貫したストーリー性が見えてこない。逆にいえば「アルプス交響曲」は山に登って下りるというこのうえなく明快なストーリーがあるから、人気曲なんだなとも感じる。
●で、その「アルプス交響曲」はきわめて色彩感が豊かで壮麗。しかも起伏に富み、表情豊か。整備された最上の自然公園を散策するような快適ハイク。輪郭のくっきりとした明瞭な響きはパーヴォならでは。N響はシェフが変わっても、パーヴォが帰ってくるとすっかりパーヴォの音になるのがうれしい。客席の反応も上々で、楽員が退席しても拍手が止まず、パーヴォのソロ・カーテンコールに。パーヴォはだれもいない舞台に向かって透明オーケストラを称える仕草。
●客席は若者の姿が目立つ。これは「アルプス交響曲」効果なの? だとしても、最近、N響の客席に若い人が増えている実感がある。かつては在京オケでも圧倒的に平均年齢が高いと思っていたけど、その状況はコロナ禍を経てだいぶ変わったのかも。楽員も他の楽団に比べて若い。うっかり過去の先入観で語らないように気をつけねば。
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