●16日はライブ配信で東京・春・音楽祭の辻彩奈「マティス展」プレ・コンサート。この日で音楽祭は閉幕したのだが、一度、配信でも聴いておきたいと思っていたので滑り込みで。会場は東京都美術館講堂。この音楽祭ではおなじみの場所。休憩なしの1時間プログラム。辻彩奈のヴァイオリン、碓井俊樹のピアノで、コレッリの「ラ・フォリア」、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」、ストラヴィンスキー(ドゥシュキン編)の「イタリア組曲」。これまでロマン派や20世紀作品での見事な名演が記憶に残っている辻彩奈だが、今回はバロック+疑似バロック・プログラム。ノン・ヴィブラートも用いるが、HIPというよりは、朗々とした現代的なスタイル。芯のある美音がたっぷりと鳴り響く。ストラヴィンスキーは切れ味鋭く、爽快。乾いたリリシズムが魅力の曲だが、そこに潤い豊かな歌の要素が加味された感。アンコールに(伝)パラディスの「シチリアーノ」。この曲も「イタリア組曲」と同じく、ドゥシュキンが「生みの親」だからということでの選曲なのだろう。
●で、ライブ・ストリーミング配信について。この音楽祭での配信はIIJのサポートにより実現しており、飯田橋の本社にあるスタジオを拠点にして行っている。会場にはリモートカメラが設置され、操作はスタジオからのリモートだったかと。この公演についてはカメラは固定の一台のみ。自分で拡大して、上下左右に操作して見たいところを見ることができるようになっているのだが、カメラが動くのではなく、もとの画の一部を自分でズームアップしているだけの簡便な方式。徹底して合理化した配信スタイルとして、これはこれで大いにありだと思った。少なくとも自分は公演を楽しめた。音質も十分よい。
●アーカイブ配信はないので、その場で消えるという意味では、配信といっても演奏会と同じ。まあ、本音をいえば、往々にして「出かけられない時間帯」は「配信を見れない時間帯」でもあるので、一日かせめて半日くらいタイムシフトで聴けたらありがたいとは思うけど。
April 18, 2023