●今年のゴールデンウイークは4年ぶりにラ・フォル・ジュルネTOKYOが帰ってきた。記者会見の際にお伝えしたように、今回は有料公演を東京国際フォーラムのホールA、ホールC、ホールD7の3会場に絞った形で、これまでに比べればぐっとコンパクトな形での開催。従来賑わっていた地下の展示ホールが閉鎖されていたり、会場内の装飾が寂しかったりと規模の縮小を感じる一方、客席は大盛況でチケットは次々とソールドアウトに。ホールCはもちろんのこと、5000席のホールAすら完売する公演がいくつもあった。コロナ禍のブランクがあったけど、やっぱりこの時期、多くの人たちがラ・フォル・ジュルネを待ち望んでいたのだということを実感する。ファミリー層など、ふだんの演奏会で見かける人たちとはぜんぜん違った人々がこの音楽祭にはおおぜいやってくる。これがラ・フォル・ジュルネの底力。
●で、今回、自分はいくつか誤算があって、ほんの少ししか公演を聴けなかったのだが、記憶に残った事柄を記しておくと、3日目のホールAで福間洸太朗が横山奏指揮東京21世紀管弦楽団と共演して、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏。歯切れのよい独奏ピアノと柔らかいオーケストラのサウンドの組合せは「外はふわっ、中はカリッ」(いや、逆か?)。アンコールがびっくりで、真っ赤なハチマキを取り出して、なにをするのかと思ったら、ハチマキではなく目隠し。で、ベートーヴェンのソナチネ ヘ長調の第1楽章を左右逆手で演奏した。マジっすかー。お祭りならではのサービス精神。
●もうひとつ、同日ホールCでのベートーヴェンの七重奏曲は、編成の特殊さゆえに音楽祭でこそ名手の共演が聴ける曲目。オリヴィエ・シャルリエのヴァイオリン、川本嘉子のヴィオラ、マクシム・ケネソンのチェロ、髙橋洋太のコントラバス、吉田誠のクラリネット、水野信行のホルン、モリス真登のファゴットというメンバーによる上質のアンサンブル。なかなかライブでは聴けないが、こうして聴くとヴァイオリンがひっぱる弦楽器チームとクラリネットがひっぱる管楽器チームの綱引き感みたいなものがあって楽しい。
●従来、チケット売り場があった場所が物販コーナーになっていた。あと、OTTAVAのブースがぴあクラシックといっしょになって復活していた。地上広場のネオ屋台村は健在。人が多すぎて、ここでの飲食は断念したけど。
●今回も当日配布プログラムの曲目紹介原稿をいくつか書いた(無署名原稿)。それにしてもこのゴールデンウィークはコロナ禍の反動もあって(そして好天にも恵まれ)、どこに行っても人出がすごい。
May 6, 2023