●10日はトッパンホールで平崎真弓のヴァイオリンとクリスティアン・ベザイデンホウトのフォルテピアノによるデュオ。「モーツァルトと遊ぶ」と題され、モーツァルトのフォルテピアノとヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 K296、ソナタ ト長調 K379、ロンド イ短調 K511、ソナタ 変ロ長調 K454というプログラム。3作のヴァイオリン・ソナタに一曲フォルテピアノのソロでロンドがはさまれている。ソナタは年代順に並んでおり、最初のK296には身近な家庭音楽的な性格を感じるのに対し、おしまいのK454になるとスケールの大きな作品で、ぐっと成熟度が高まっている。このK454の第2楽章が絶美。
●ふたりの奏者は今回が初共演だそうなのだが、息の合ったコンビ。映えるのは平崎真弓のヴァイオリン。澄んだ音色だが芯が強く、ダイナミックで起伏に富んだ表現。これにベザイデンホウトがぴたりと寄り添いながら、モーツァルトの音楽の微細な光と影を描き分ける。アンコールにソナタ ホ短調K304より第2楽章。これは特別な名曲。晴れやかなソナタの後だけに一段と沁みる。21時少し前に終わったが、密度が濃く充足。
May 11, 2023