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May 17, 2023

4人の指揮者によるニュークラシックプロジェクト 藤岡幸夫、山田和樹、原田慶太楼、鈴木優人

●15日は東京オペラシティで「4人の指揮者によるニュークラシックプロジェクト」。指揮者が4人もそろう演奏会は珍しいが、オーケストラのレパートリーとなり得るような新しい作品を発掘しようという趣旨の企画。公募による44作品を、藤岡幸夫、山田和樹、原田慶太楼、鈴木優人の4人が採点し、その結果、上位に入った4作品を表彰して世界初演する。オーケストラ曲に賞を与えるなら、それを実際に演奏会でとりあげる機会を持っている指揮者が選考しようというのは筋の通った話。オーケストラは東京シティ・フィルと愛知室内オーケストラの合同演奏。しかもこれら4作品は全音が楽譜出版と楽曲管理を引き受け、ユニバーサル・エディションのオンライン楽譜提供サービスscodoを通じてワールドワイドにスコアが閲覧&販売され、日本コロムビアがCDをリリースするなど、至れり尽くせりのバックアップ。なによりこの日の指揮者陣とオーケストラの作品に対する献身ぶりがすばらしかった。最上級の演奏に作曲者たちは感激したはず。
●ひとりの指揮者が一曲を指揮する方式で、順に城代悠子の「IKUSA」(原田慶太楼指揮)、山田竜雅の「祈り」〜⼥声と管弦楽のための〜(山田和樹指揮、ソプラノは安江陽奈子)、松井琉成の交響詩「うつしがたり〈翠〉」(藤岡幸夫指揮)、萩森英明の「東京夜想曲」(鈴木優人指揮)が演奏された。曲はどれも10分強くらい。実は演奏会のメインプログラムになるような30分くらいの大作を4曲聴くのかと覚悟して足を運んだので、現地で曲の短さを知って拍子抜けしたのだが、トークをはさんでの進行だったのでそれでも終演は21時。4作それぞれまったく個性の異なる作品なのだが、いずれも耳なじみのよい作品ばかりで、いわゆる現代音楽の受賞作品とはタイプが違う。映画音楽やテレビドラマ、ゲーム音楽のテーマ曲になってもおかしくないような曲調が目立ったかな。4曲のなかでは最後の萩森英明作品が格段に洗練されており、オーケストラの扱いが巧みだと感じる。萩森さんはすでに琉球交響楽団のために作曲した「沖縄交響歳時記」がCDリリースされている他、「題名のない音楽会」のアレンジでも大活躍している方なので、驚きではない。あと、萩森さんのトークがおもしろすぎる……。
●この企画、次はあるのだろうか。こんなに多忙な指揮者4人のスケジュールを合わせるのは大変すぎるので、次回があるなら4人でやる必要はないと思うけど、続けることでなにかが起きるかもしれない。
●甘いものばかり食べていると辛いものを食べたくなる。辛いものばかり食べていると甘いものを食べたくなる。甘いか辛いかはたぶん、問題ではない。