●24日はサントリーホールでファビオ・ルイージ指揮N響。プログラムはハイドンの交響曲第82番「くま」、モーツァルトのホルン協奏曲第3番(福川伸陽)、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。3人の作曲家が並んだウィーン古典派プログラム、なんだけど、さらにいえば森の動物プログラムだと思う。熊が山にいて、田園で小鳥がさえずる。ホルン協奏曲は狩のイメージ。
●ルイージの音楽はHIPではなくスマートで流麗。ハイドンの交響曲は傑作の宝庫だが「くま」も痛快。「くま」の愛称は終楽章のバグパイプ風低音が熊使いのムチを連想させるから付いたそうだが、あの低音そのものにのっそりした熊のイメージを思い浮かべて聴く人も多いと思う。モーツァルトのホルン協奏曲第3番では元N響の福川さんが凱旋。古巣のオーケストラと一体となった室内楽的で親密なアンサンブル。柔らかくまろやかな音色で、繊細な弱音表現が魅力。モーツァルトだけだとパワフルに吹く場面がほとんどないので、もっと聴きたくなるが、ソリスト・アンコールでロッシーニ「狩のファンファーレ」。充足。後半の「田園」はいくぶん抑制的に始まったと思ったが、次第に高潮し、陶酔的な終楽章がクライマックス。ルイージの音楽は前任者と対照的。パーヴォは縦に鋭く楔を打ち込む鮮やかな音楽だったが、ルイージは柔らかく温かい音色で横にしなやかに流れる。
●楽員退出後も拍手が鳴りやまず、ルイージとコンサートマスターふたり(郷古廉と篠崎史紀が前後半で席を入れ替わった)が登場して、3人でカーテンコール。
May 25, 2023