●29日はリゲティ生誕100年を記念してトッパンホールで開かれたZum 100. Geburtstag! Vielen Dank, György Ligeti 第2夜へ。2夜連続のオール・リゲティ・プログラムで、第2夜のみ足を運ぶ。チケットは両日とも完売。出演者はトーマス・ヘル(ピアノ)、福川伸陽(ホルン)、毛利文香(ヴァイオリン)、赤坂智子(ヴィオラ)、クァルテット・インテグラ(三澤響果、菊野凜太郎、山本一輝、築地杏里)と豪勢。曲は前半にピアノのためのエチュード第1巻、弦楽四重奏曲第2番、後半に無伴奏ヴィオラ・ソナタ、ホルン、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲「ブラームスへのオマージュ」。恐るべき高密度の公演で、圧倒されっぱなし。すべてにおいて魔神の域だと思ったけど、とくに売り出し中のクァルテット・インテグラが強烈。キレッキレ。極限まで研ぎ澄まされたリゲティを堪能。
●最初のピアノのためのエチュード第1巻から、最後のホルン・トリオまでおおむね通して感じたのは眩暈の感覚。なんというか、音に酔う(車酔いみたいな意味で)。リズムや音律など、ずれたもの、歪んだものが同時進行していく気持ち悪さというか快感というべきか。あるいはずっと騙し絵を見つめていて見当を失うような感覚。あと、無伴奏ヴィオラ・ソナタ、こういう曲だったのね……と初めて知る。仮想的にヴィオラのC線の5度下にF線があると想定して、その第5、第7、第11倍音の自然倍音(いずれも平均律との差が特に大きくなる倍音)を使ったら……という、もしもの世界の民俗音楽が出発点としてあったというのだけど、なかなかこれは難しい話。ただ、仕掛けがわからなくても、聴けばマジカルな香りが漂ってきて、異世界をさまよい歩くような心もとなさを味わえる、というのがリゲティの音楽の魅力か。
●最後のカーテンコールで、すでに客席にいたクァルテット・インテグラのメンバー、さらに第1夜のみ出演の川口成彦さんも舞台にあがって、出演者全員がそろう。リゲティ・イヤーのハイライト。
May 30, 2023