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June 8, 2023

エリアス弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル III ~ サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

エリアス弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル●7日はサントリーホールのブルーローズでエリアス弦楽四重奏団のベートーヴェン・サイクル。5日に続いての同シリーズだが、ワタシはこの2公演のみ。もし全日聴けていたら最高の体験だった。プログラムは弦楽四重奏曲第5番イ長調、弦楽四重奏曲第9番ハ長調「ラズモフスキー第3番」、弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調。少し長めのプログラム。終演は21時20分頃。全体として演奏の感触は先日の公演と同様で、エキサイティングかつ調和のとれた最上級のベートーヴェンを聴いたという満足感が残る。
●弦楽四重奏曲第5番、ハイドン&モーツァルト風味があるけど、冒頭は(調は違うが)モーツァルトの第17番「狩」を連想する。第2楽章がメヌエットで第3楽章が緩徐楽章という逆順の楽章構成が特徴的。この緩徐楽章が味わい深い。「ラズモフスキー第3番」は速めのテンポによるスリリングな演奏。第1楽章も速いと思ったが、終楽章はもっと速い。同じ中期作品で比較すると、先日の「セリオーソ」よりもぐっとコーナーギリギリを攻めた感。中期交響曲と遜色のない作品の巨大さに圧倒される。フィナーレの終わりそうで終わらない執拗さに「運命」味も。曲が終わる数小節前からワーッと拍手が出そうな白熱した演奏だと思ったが、今日の演奏会場でそんなことは起きるはずがない。
●後半の第14番に先立って、この日も第1ヴァイオリンのサラ・ビトロックがマイクを持って簡潔な作品紹介。かつてないさまざまな感情表現を実現するために後期四重奏曲は多楽章化しており第14番は7つのが楽章があることや、各楽章の性格と全体の大まかな流れを紹介。こういった短いトークは大歓迎で、後半頭に入れる方式はもっとまねされてもよいのでは(トークに前置きとかまとめを入れないで、本題だけ話すところがいい)。そして長い曲だが長さを感じさせないフレッシュな演奏。
●ベートーヴェンの弦楽四重奏曲だと客席の平均年齢と男性率が高くなるという説を小耳にはさんだ。
●本当は「ラズモフスキー第3番」という曲名はどうかと思う。フルに曲名を書くと、弦楽四重奏曲第9番ハ長調「ラズモフスキー第3番」作品59-3。同じ曲に「第9番」と「第3番」というふたつの番号が混在しているのが落ち着かないし、「作品59-3」の「3」の情報が「第3番」と本質的に重複しているのも気になる。データとして「正規化」したくなる。でも、今さらできない。

ポップなベートーヴェン
●AIに描いてもらったベートーヴェン、ふたたび(EdgeのImage Creator/DALL-E)。ポップ・アート風に。