●21日はサントリーホールでジャナンドレア・ノセダ指揮N響。プログラムはバッハ(レスピーギ編)3つのコラール、レスピーギのグレゴリオ風協奏曲(庄司紗矢香)、ラフマニノフの交響曲第1番。いつもノセダが振るとN響の音が熱を帯びる。今回も最初のバッハからすでに励起状態に。珍しい作品が並んだお得なプログラムだが、なかでも庄司紗矢香の独奏によるグレゴリオ風協奏曲は貴重。レスピーギなりの古楽趣味が協奏曲の形に結実した作品ではあるが、アルカイックというよりは幻想的で典麗。アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番よりサラバンド。これで前半がバッハ~レスピーギ~バッハとシンメトリックな形で整った。
●後半のラフマニノフの交響曲第1番は圧巻。初演の際の失敗のエピソードが有名な作品だが、ノセダとN響の気迫みなぎる演奏を聴いていると、作品の弱さなどまったく感じない。むしろ交響曲の最初の一歩からこれだけ書けてしまう交響曲作曲家としてのラフマニノフの偉才を再認識。この曲、ライブでは初めて、と思っていたのだが、聴きはじめて気がついた。前にも聴いてる、尾高忠明指揮N響で。で、そのときも思ったけど、この曲って最晩年の交響的舞曲のプロトタイプだな、と。第1楽章の主題が交響的舞曲でも出てくるし、「怒りの日」の引用もそうだし、フィナーレでの衝撃的な銅鑼の一撃もそう。どうしても忘れられない若き日の作品を45年後にリメイクしたと思うと、初演の失敗をどんだけ根に持ってたのよ……と想像する。
●客席は盛大にわき、ノセダのソロ・カーテンコールへ。ラフマニノフの交響曲第1番でこれだけ盛り上がるとは。ちなみに本日もノセダ指揮N響が同じプログラムを演奏するのだが(チケットは完売)、今月は東フィル定期でも尾高忠明指揮でラフマニノフの交響曲第1番が演奏される(23日以降の3公演、いずれもチケットは予定枚数終了。亀井聖矢が協奏曲を弾く)。ラフマニノフの交響曲第1番が都内で一週間に5回演奏されるという事態が出来。
June 22, 2023