July 5, 2023

神戸を去るイニエスタ

●週末のJリーグ、ヴィッセル神戸対コンサドーレ札幌で、神戸のイニエスタが日本でのラストマッチを迎えた。今シーズン、ほとんど出番を失っていたイニエスタだが、この試合では先発。だれもが見たい伝説の名選手なのだから、先発するのは当然という見方もあるだろうし、現在優勝争いをしているのにチームコンセプトから外れた選手を先発させるのはおかしいという見方もあるだろう。ファンがどこまでもタイトルにこだわる気質なら、吉田監督は後半途中から投入するか、あるいは出場させなかったんじゃないかなとは思った。今のハードワークする神戸にイニエスタの居場所はなく、試合は札幌が1点リードした状態で進んだが、後半にイニエスタが下がってから、神戸が同点に追いついて1対1でドロー。結果もまた立場によって見方がわかれるところか。
●交代で退く際、イニエスタは札幌のペトロヴィッチ監督としっかりと抱擁し、自チームの吉田孝行監督とは握手もしなければ目も合わせない。こんなに奇妙なシーンはないと思ったが、互いが自分の立場を譲れない以上、プロスポーツとはそんなものなのかもしれない。昨季、残留争いにまで巻き込まれた神戸が、イニエスタを外して優勝争いをしているのだから、吉田監督は完璧な結果を出している。一方、39歳のイニエスタにしてみれば神戸で引退する可能性もあったと思うが、プレイできない悔しさをかかえたままピッチを去ることなどできず、アメリカに行くのではないかといわれている。冷ややかなシーンがあったとはいえ、試合終了後のセレモニーに家族とともに登場したイニエスタの態度は立派で、超一流選手らしいふるまいを見せてくれた。
●イニエスタはバルセロナの試合を比較的よく見ていた頃に頭角を現してきたので、その頃の印象が強い。シャビに似たタイプの選手が出てきたなと思ったけど、中盤の選手層が厚く、3トップの一角に入ることもあった。ロナウジーニョ、エトー、メッシ、イニエスタ、シャビらの豪華メンバー。ゼロ年代半ばの輝けるバルセロナを支えた名選手として、イニエスタは記憶に残る。