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July 19, 2023

DGの「ステージプラス」で久石譲指揮ウィーン交響楽団の自作自演

DGの「ステージプラス」で久石譲指揮ウィーン交響楽団
●以前に記者会見の模様をお届けした、ドイツ・グラモフォン(DG)の定額制映像&音楽配信サービス「ステージプラス」で、久石譲指揮ウィーン交響楽団の公演が配信されていたので見てみた。3月30日、ウィーン楽友協会でのライブ。プログラムはすべて自作で、交響曲第2番、ピアノの弦楽器のための「ムラーディ」(青春)、「千と千尋の神隠し」より「ある夏の日」(ピアノ独奏)、交響組曲「もののけ姫」(カタリナ・メルニコヴァのソプラノ)、「となりのトトロ」。ピアノ独奏も久石譲自身。「ある夏の日」と「となりのトトロ」はアンコールか。ちなみに久石譲はドイツ・グラモフォンと専属契約を結んでいる(プレスリリース)。
●冒頭、久石譲が姿を見せただけで場内から歓声が上がる。交響曲第2番は映画とは無関係な純器楽作品で、全3楽章。ジョン・アダムズを連想させるようなポスト・ミニマリズム的なスタイル。第3楽章が「かごめかごめ」変奏曲になっていて、ひなびた日本の田園風景が都会風の装いに生まれ変わっているのがおもしろい。ピアノの弦楽器のための「ムラーディ」は「夏」「HANA-BI」「キッズ・リターン」の3曲で構成される。北野武監督の映画から3曲を組合わせた模様。ピアノ独奏による「千と千尋の神隠し」より「ある夏の日」で、客席はスタンディングオベーション。
●交響組曲「もののけ姫」はソプラノ独唱付きで全10曲、30分近い作品。第2曲「タタリガミ」では勇壮な和太鼓をウィーン交響楽団の奏者が叩くシーンも。第6曲「もののけ姫」でソプラノ独唱のカタリナ・メルニコヴァが登場。日本語歌唱に果敢に挑戦。第9曲「生と死のアダージョ」で大きなクライマックスを築いた後、終曲の「アシタカとサン」ではコンサートマスターによるヴァイオリンのソロ、さらにソプラノ独唱が続いて、情感豊かなフィナーレを築く。客層はかなり若い様子で、曲が終わるとウワーッと歓声が上がる。おしまいは「トトロ」。楽員の皆さんも楽しんでいる様子。場内大喝采で総立ち。
●ジョン・ウィリアムズ指揮ウィーン・フィルの公演なんかでも思ったけど、19世紀のオペラがオーケストラ・コンサートのレパートリーとして序曲や間奏曲等を供給してくれたのと似たような役割を、20世紀後半以降は映画やミュージカルが果たしているのかなと思う。みんなマスネのオペラ「タイス」を観てなくても「タイスの瞑想曲」は知っているように、だんだん「スター・ウォーズ」を観てなくても「スター・ウォーズのメイン・タイトル」は知ってるし、宮崎アニメを観たことなくても「トトロ」の曲は知ってる、みたいになってゆくのかも。というか、なりつつあるのでは。