●9日はまたもミューザ川崎へ。フェスタサマーミューザKAWASAKIでカーチュン・ウォン指揮日フィル。今回も平日昼公演だが客入りはしっかり。プログラムはヴェルディの歌劇「運命の力」序曲、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲「Mystic Forest」(須川展也)、ムソルグスキー~ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」。なんでもカーチュンが初めて買ったCDは、須川展也がコンサートマスターを務めた東京佼成ウインドオーケストラのアルバムだったとか。学生時代の憧れのヒーローとの共演が実現したというプログラム。
●冒頭、ヴェルディの「運命の力」序曲はパワフルで雄弁。菅野祐悟のサクソフォン協奏曲「Mystic Forest」では須川のソロが圧巻。菅野祐悟作品は録音で交響曲第1番と第2番を耳にしたことがある程度で、ライブでは初めて。劇伴風で明快な作風、オーケストレーションが巧みで華やか。なんというか、きらきらしていて眩しい。第2楽章中盤がストラヴィンスキー「春の祭典」を連想させる。ソリストアンコールに真島俊夫「シーガル」より。後半の「展覧会の絵」はカーチュンの豊かな語り口によるダイナミックな演奏。前半のソリスト須川が後半も残ってオーケストラのなかで吹いてくれるのがうれしい。「古城」のサクソフォン・ソロはさすがの絶品。「キエフの大門」では思い切りよくオーケストラを鳴らして壮大なクライマックス。カーチュンの音楽は豪快だが、細部を疎かにせず、力任せにならない。アンコールにはエルガーの「ニムロッド」。平和への祈りの音楽として受け止めた。
August 10, 2023