●映画「シン・仮面ライダー」を観るためにAmazon Primeに入っていたのだが、結局、Prime Videoはめったに観ないとわかったので解約……するのだが、その前にふと気になって、スタンリー・キューブリック監督の映画「シャイニング」を観る。大昔に観てはいるのだが、記憶も薄れていたし、今だからわかることも多数。有名な話だが、「シャイニング」の原作者スティーヴン・キングは、キューブリックの映画にまったく納得がいかず、ついには自身の脚本でテレビドラマ版「シャイニング」を作っている(これはこれで秀逸)。ワタシはキングの初期傑作群に対してシンパシーが強いため、「シャイニング」についても原作の肩を持ってしまうのだが、それでもキューブリックの映画がまれに見る傑作であることはまちがいない。
●なんといっても映画には映像による直接的な表現があるので、オーバールックホテルがどんな立地にあるのか、雄大な大自然の光景からはっきり伝わってくる。例の双子の女の子の怖さも映像ならでは。で、今回改めて思ったのは、映像に加えて音響もとてもよくできているということ。冒頭の「怒りの日」のテーマや、バルトークの「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」など、音楽の効果的な使用に加えて(使用曲一覧はこちら。ペンデレツキやリゲティ等)、ダニーが乗っている三輪車がキコキコと鳴る音とか、ジャックがタイプライターを打つ音とか、壁にボールをぶつける音とか、どれもこれも音が不穏で怖い。斧を扉に振り下ろすジャックよりも、三輪車のキコキコのほうがよっぽど怖い。
●「シャイニング」は原作と映画で肝心の部分が違っているのに、どちらも歴史的傑作になった珍しい例だと思う。キングの原作は父と子、夫と妻といった家族の物語であって、善であろうとする父が次第に悪に蝕まれていくところに真の恐怖がある。亡霊から酒を勧められるのもアルコール依存症という設定があるからで、これも人によっては相当に生々しい話なんじゃないだろうか。
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P.S. 昨日で当サイトの開設28周年だった。多謝。実はここはGoogleよりもAmazon.co.jpよりも古くからある。