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September 4, 2023

山田和樹指揮日本フィルのモーツァルト、バッハ、ウォルトン

山田和樹指揮日本フィル
●2日はサントリーホールで山田和樹指揮日本フィル。プログラムは前半がモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、バッハ~斎藤秀雄の「シャコンヌ」、後半がウォルトンの戴冠式行進曲「宝玉と勺杖」と交響曲第2番。去年、同コンビでウォルトンの交響曲第1番の名演があったけど、今回はめったに聴けない第2番がメイン・プログラム。
●「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は今では珍しい大編成による厚みと潤いのあるモーツァルト。情感豊かでたっぷり。遊び心にあふれ、テンポや強弱の変化に富む。20世紀巨匠風のスタイルに少したじろぐけど、続くバッハ~斎藤秀雄の「シャコンヌ」も管楽器入りの大編成バッハなわけで、趣旨は一貫している。昭和のモーツァルト、昭和のバッハという昭和ピリオド・アプローチ。あるいは昭和ロマン、とか。
●ウォルトンの「宝玉と勺杖」は壮麗。「勺杖」(しゃくじょう)ってどんなんだっけと検索してしまった……。で、交響曲第2番。ブラビンズ指揮都響以来、久々に聴いた。第1番から四半世紀を経て書いた第2番とあって、若さと勢いにあふれた第1番とはだいぶテイストが違う。ウォルトンなりに20世紀前半のモダニズムの洗礼を受け、当時のさまざまな作曲家たちの影響を受けている。第1番にあったヒロイックな要素は後退し、代わって洗練された味わい。オーケストレーションはカラフルで華やか。なにせ初演は1960年なので、当時は時代錯誤といわれてもしょうがないとは思うが、今になってしまえば関係ないわけで。3楽章で30分ほどで、やや短いので、うっすらと「もう1楽章、足りないのでは」感も。終楽章がパッサカリアでブラームスの第4番を思わせる趣向、前半のバッハのシャコンヌと対応させたプログラミング。主題に12音が使用されているそうなんだけど、「そんな足枷、いらないのに……」と思わなくもない。フガート以降はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」終楽章を強く連想させる。幕切れは輝かしく、パワフル。もう一度聴きたくなるような演奏だった。
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