●演奏会の前に少しだけ時間があったので、東京国立近代美術館に立ち寄る。「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が9/10までということで、企画展のほうはずいぶん混雑しているが、コレクション展はほどほどで快適。13000点を超える所蔵作品から会期ごとに約200点を展示しているというだけあって、コレクション展であっても毎回いくつも新しい作品に出会える。
●上の写真はミリアム・カーンの「私のユダヤ人」(2005-11)の一部。壁にいくつもの絵が掲げられていて、その全体がひとつの作品になっている。さまざまな形や色で表現されるアイデンティティ。はなはだ不穏。
●音楽ネタを挙げると、シャガールの「コンサート」(1974-75)。コンサートといってもクラシックのコンサートではなく、もっと猥雑な雰囲気。音楽家もいれば、軽業師もいるし、動物たちもいるということで、これはサーカスなのだろう。中央人物が吹いているのがクラリネット、その上の女性が弾いているのがヴァイオリンだとすると、クレズマー音楽のようなものを思い起こせばいいのだろうか。
●もうひとつ興味をひかれた作品を。今期のコレクション展では生誕100年を迎える写真家の大辻清司が特集されていて、その作品のひとつがこちらの「月に憑かれたピエロ」(装置・仮面デザイン:北代省三,衣装:福島秀子)(1955)。展示にはシェーンベルクのシェの字も出てこないのだが、これはなに?と思うじゃないすか。で、とりあえずWikipediaを鵜呑みにしちゃうと、シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」の日本初演はこの一年前の1954年の実験工房による「シェーンベルクの夕べ」なのだが、1955年にも武智鉄二演出で「月に憑かれたピエロ」が上演されているそうなので、そのときの写真なのかな。音楽作品の上演なのに、写真のみがアートとして残り、美術館で鑑賞されているという状況がおもしろいと思った。
September 5, 2023