●今、東京都美術館で開催中の「うえののそこから『はじまり、はじまり』荒木珠奈展」がとてもよい(~10月9日)。版画、立体作品、参加型のインスタレーションなど多彩で、アイディアが豊富。上の写真は「Caos poetico(詩的な混沌)」(2005)と題された作品。メキシコでの留学体験が着想源となっており、電柱から勝手に電線を引いて電気を使用しているメキシコの人々の暮らしぶりに触発されたのだとか。ぶら下がっている明かりを下から覗くと、ひとつひとつ内側のデザインが違っていて楽しい。
●こちらは「うち」(1999)。壁一面に扉の付いた箱がたくさん並んでいる。箱の中に明かりが灯っている。開いている箱もあれば、閉まっている箱もある。箱を開けるには鍵が必要。
●鍵はこちら。鍵をひとつ手渡されて、それを使って鑑賞者が箱を開けるという趣向になっている。鍵には番号が記されており、それに対応した番号の箱を開けるのだが、箱は番号順に並んでいないので探し出さなければならない。
●箱を見つけたら、鍵を使って開ける。なかにはそれぞれ違った絵が入っているが、そこにあるのはさまざまな家庭の情景。着想源は作者が幼少時に住んでいた団地なのだそう。
●こちらは最下フロアにどーんと展示されている「記憶のそこ」(2023)。でかい。ぱっと見、禍々しい雰囲気があって、エイリアンの卵を連想する。中に入れる。
●中に入って、上を見上げるとこんな感じ。「記憶のそこ」というだけあって、やっぱり怖い感じ。
●ほかにも作品多数で、思った以上のボリューム感。平面作品も見ごたえあり。全体を通して感じるトーンは、きれい、グロテスク、怖い、ノスタルジア。