●今週は代表ウィーク。近年、ヨーロッパ各国の代表はネーションズ・リーグやEURO予選でスケジュールが埋められてしまい、もうニッポンは欧州勢とほとんど対戦できなくなってしまったのだが、なんと、ドイツ代表との対戦が実現! というのも、ドイツは次回EUROの開催国なので予選が免除されており、日程が空いている。そこで、カタールW杯に続いて、ドイツ対ニッポンの試合が組まれることに。ドイツにとってはリベンジマッチ。ニッポンはアウェイで強豪ドイツと対戦できる超貴重なチャンス。ワールドカップ本大会では「前半はがまん(1失点してもなお)」のタイトな戦い方だったが、こんどはオープンな戦い方になる。場合によってはだいぶ失点することもあるだろう……と思っていたら!?
●な、な、なんと。 まさかのドイツ 1-4 ニッポン! 大量得点で勝ってしまった。ワールドカップでは「勝つ可能性があるとしたらこれしかない」という思い切った戦術をとってそれがピタリとはまって勝った。ギャンブルに勝ったという印象が強い。だが、今回の試合はニッポンが攻守ともに相手を凌駕して、勝つべくして勝った。長い間、代表の試合を見てきたけど、サッカー大国と対戦して個の技術でこちらが上回ってるなと感じたのは初めてのこと。特にゴールキーパーからのビルドアップの場面。相手のプレスを交わしながらセンターバックやボランチ、サイドバックで速くて正確なパスをつなぐ。そこ、ミスったら即失点でしょ、みたいなところを当然のようにつないでくる。逆にドイツがニッポンのプレスにミスをして大ピンチを迎える場面もいくつか。こんな時代がやってくるとは……。
●ニッポンのメンバーはGK:大迫敬介、DF:菅原由勢(→橋岡大樹)、板倉滉、冨安健洋、伊藤洋輝-MF:守田英正(→田中碧)、遠藤航-伊東純也(→久保建英)、鎌田大地(谷口彰悟)、三笘薫(→堂安律)-FW:上田綺世(→浅野拓磨)。唯一Jリーグ勢から広島のキーパー大迫が先発。危なげないというか、なにせドイツの枠内シュートは3のみ(ニッポンは11)。目をみはったのは右サイドバックの菅原由勢。ニッポンの1点目は菅原が縦に走り込んで低いクロスボールを入れ、中で伊東がリュディガーと競りながらニアの狭いところを抜いてゴール。これは気持ちのよいゴール。その後、ドイツは巧みなパスワークからサネがゴール左隅に流し込み同点。ここまではやっぱりドイツは強いなと思った。が、直後、またも菅原の低いクロスに伊東が合わせ、さらにそのボールに上田がとっさの反応でコースを変えて2点目。菅原が2点にからんだ。前半はニッポンが1点リードして終える。
●後半15分に森保監督は鎌田を下げて谷口を入れて、センターバックを3枚に増やす。これで実質5バックに。中盤が薄くなったので、ここから一気にドイツのボール支配率が上がる。ワールドカップとは逆で、先にリードして、後半は守るという展開。これで守り切ればそれだけでも立派なものだが、後半45分からニッポンは2点を奪ってしまう。まずは相手の高い最終ラインからボールを奪った途中出場の久保が、ゴール前に独走。キーパーのテア・シュテーゲンを引き付けてから中央ドフリーの浅野に横パスを出して、浅野が悠々とゴール。あそこで浅野に出した久保はえらい! レアルソシエダで中心選手としてあれだけ活躍しながら代表で先発できなかったのに、この大人のプレイ。浅野は久保といっしょにジャガーポーズ。ドイツでプレイする浅野が、ワールドカップに続いてまたもドイツから得点。さらに後半47分、久保のクロスに中央でドフリーになっていた田中碧が冷静にコースを狙ったヘディングを決めて4点目。こんなこともできる選手だったとは。得点にからんでいないが三笘は今日もキレッキレ。守備では冨安が圧倒的。
●ニッポンが最高によかったことはまちがいないけど、ドイツの不調ぶりも尋常じゃない。あのドイツがこんなに自信を失ってプレイしているなんて。直近ではコロンビア、ポーランドにも負けているので、ドイツは3連敗。さらに遡ってもウクライナと引分け、ベルギーに負け。ハンジ・フリック監督解任論も出ているようだが、これまでドイツ代表で監督が途中解任されたという話は聞いたことがない。
September 11, 2023