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September 12, 2023

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団のオール・シュトラウス・プロ

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団
●9日はNHKホールでファビオ・ルイージ指揮N響。新シーズンの開幕公演に首席指揮者ルイージが選んだのはリヒャルト・シュトラウスの3曲。それもひとひねりしてあって、交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、「ブルレスケ」(マルティン・ヘルムヒェン)、交響的幻想曲「イタリアから」というラインナップ。3曲をくくるとすれば、笑い、ないし戯れか。
●「ブルレスケ」を聴ける機会は貴重。実質ピアノ協奏曲で、ソリストはマルティン・ヘルムヒェン。ソリストのヴィルトゥオジティがロマンではなくユーモアに昇華されてゆくという稀有な曲。「ティル」と並べて聴くにはぴったりか。あるいはパロディ的な性格からメタ・ピアノ協奏曲として聴くこともできるのかも。ピアノとともにティンパニが活躍することもあってか、少し前に聴いたばかりのマーラー第7番をつい連想する。ヘルムヒェンはダイナミックで、NHKホールの大空間を相手に健闘。アンコールにシューベルトの「楽興の時」第3番。
●後半の交響的幻想曲「イタリアから」は、なんといっても終楽章の「フニクリ・フニクラ」が最高におかしい。ルイージの指揮ぶりは「ティル」でも「イタリアから」でもはめを外すようなところはなく、正攻法。華麗なるオーケストレーションに浸りながら、脳内に流れるのは「鬼のパンツはいいパンツ」。しかし西洋人はこの曲を聴いても「鬼のパンツ」など思い浮かばないわけで、われわれはこの曲を「一粒で二度おいしい」楽しみ方をしている。
●N響の機関誌「フィルハーモニー」(プログラムノート)で、今号からはじまった「はじめてのクラシック」のコーナーにIKEさんがイラストを寄稿している。オンラインでもPDFで読めるので、おすすめ。