●「おらおら、ブルックナーでモッサリしてんじゃねーよっ!」と指揮者の煽る声が聞こえてきそうな快演であった、マリオ・ヴェンツァーゴ指揮読響。12日、サントリーホール。プログラムは前半にスタニスワフ・スクロヴァチェフスキの交響曲(日本初演)、後半にブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。なんといっても後半のインパクト大。
●前回の客演ではブルックナーの交響曲第3番で見事な演奏を披露してくれたヴェンツァーゴだが、今回もすこぶる痛快なブルックナー。全体のテンポ設定はかなり速め。第1楽章、最初の主題からして史上最速(自分比)。もっさり感ゼロ、湿気がなくカラッとした、躍動するブルックナー。しかし、ぜんぜん即物的ではなく、ためるところはぐっとためたり、意外な表情付けがあったりして十分にエモーショナルなのだ。読響から明快で硬質な響きを引き出す。終楽章も高速で、舞踊性すら感じる。前へ前へと止まることのない推進力。もうロマンティックが止まらない! 深い森もなければ野人でもない、大伽藍でもなく、むしろ高層建築がそびえ立つコンクリートジャングルのよう。鋭い光を反射してきらきらと輝きながら、マグマのようなエネルギーを放出する。
●曲が終わると完璧な沈黙が訪れ、盛大なブラボー。指揮者はハイテンションで喜びをあらわにする。指揮台でこんなにご機嫌なブルックナー指揮者はなかなかいない。客席の反応はわりとはっきりわかれていたんじゃないかな。さっさと帰る人は帰る、でも熱心なお客さんたちが大勢居残ってソロ・カーテンコールで大喝采。ヴェンツァーゴ、大勝利。
September 13, 2023