●15日は東京オペラシティで「池辺晋一郎 80歳バースデー・コンサート」。広上淳一の指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢、東京混声合唱団、北村朋幹のピアノ、古瀬まきをのソプラノ、中鉢聡のテノールという豪華出演者陣による三部構成で、新旧の多岐にわたる作品を並べて作曲家の足跡をたどる。第1部は無伴奏合唱による「相聞」Ⅰ~Ⅲ(1970、2005)。第2部はオペラで「死神」(1971/1978)から「死神のアリア」、「高野聖」(2011)から「夫婦滝」「白桃の花」、第3部はオーケストラ作品で、ピアノ協奏曲Ⅰ(1967)、シンフォニーⅪ「影を深くする忘却」(2023)世界初演(東京オペラシティ文化財団とオーケストラ・アンサンブル金沢の共同委嘱)。
●第1部から第3部まで、それぞれに旧作と近作/新作が配置されているという構成で、たっぷり。特に第3部は56年ぶりの再演という東京芸大卒業作品のピアノ協奏曲と、世界初演の交響曲が並べられて振り幅マックス。爆発的なエネルギーにあふれる協奏曲、深い余韻を残す交響曲の対比も鮮やか。協奏曲の後、北村朋幹がアンコールとして、池辺晋一郎「雲の散歩」こどものためのピアノ曲集より「メエエと啼かない ひつじ雲」を演奏。情感豊か。第2部のオペラ「高野聖」抜粋も聴きごたえあり。このオペラは以前に全曲上演に接しているので、抜粋といえども全体像の印象がある分、一段と楽しめた。妖しさと純愛の世界。山奥の妖女のもとを若い坊主が訪れるのはバルトーク「青ひげ公の城」の男女逆転版のよう。そのときも同役を歌っていた中鉢聡の日本語歌唱が聴きとりやすい。
●演奏後、全員で「ハッピーバースデートゥーユー」を歌うサプライズがあり、舞台袖から大きな誕生日ケーキが運ばれてきた。舞台上と客席の両方から池辺さんを慕う気持ちが伝わってきて、温かい雰囲気で終演。
September 19, 2023