●13日はサントリーホールでカーチュン・ウォン指揮日本フィル。これがカーチュンの首席指揮者就任披露演奏会。プログラムはマーラーの交響曲第3番、一曲のみ。カーチュンの十八番。かつてマーラーはシベリウスとの対話で「交響曲とは森羅万象を内包した世界のようでなくてはならない」と語ったというが、その言葉にいちばんぴったりと当てはまる作品が交響曲第3番だと思う。なにもかもがそこにあり、地上から天上までも包み込むような巨大な交響曲。カーチュンのマーラーは第1楽章からじっくりとした歩みではじまり、随所に趣向を凝らして巨大な作品の細部まで彫琢する。第4楽章のメゾ・ソプラノは山下牧子。深みのある声が、大自然から人間の世界へといざなう。第5楽章の「ビムバム」は東京少年少女合唱隊。問答無用の純粋さ。終楽章は彫りの深い表現で大きなクライマックスへ。左右中央に分散して配置されたシンバルはまさかの7名。これは視覚的な効果が大きかったか。
●客席の反応は熱烈。新時代の到来を告げる記念碑的なマーラーに惜しみない喝采が寄せられ、最後はカーチュンのソロ・カーテンコールに。翌日も同じプログラムだったが完売で当日券なしの盛況ぶり。カーチュンへの期待度の高さは半端ではない。
October 17, 2023