●15日はサントリーホールでジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。前半がドビュッシー(ノット編)の交響的組曲「ペレアスとメリザンド」、後半がヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(初稿、ポール・ウィングフィールドによるユニヴァーサル版)。ともに名高い傑作だが、決して聴く機会の多いとはいえない二作を一度に聴けるありがたいプログラム。ドビュッシーとヤナーチェクという同時代人ながら対照的な作風の作曲家による組合せの妙も感じる。
●前半はドビュッシーの交響的組曲「ペレアスとメリザンド」。このオペラを声楽なしの管弦楽曲にする試みはこれまでもいくつかあったが、ノットは自ら組曲を編んだ。もともとの物語、登場人物の感情の動きを尊重して、十分な尺のある組曲に。本来のオペラの凝縮バージョン。声楽抜き、つまり登場人物がいないので、あらかじめどの曲がどんな場面かを把握しておかないと、物語の流れがわからなくなる。目のつまった濃密かつ柔らかな東響のサウンドを堪能。
●後半、ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」は破格のミサ曲。自分がこの曲から連想するのはベートーヴェンのミサ・ソレムニス。その荒ぶるモラヴィア版みたいなイメージ。巨大で、野心的で、敬虔さよりも人間的なヒロイズムを感じさせるという点で。この曲には複数の版があるが、今回用いられたのは初稿と呼ばれるもので、冒頭とおしまいにイントラーダが置かれる。ノットと東響による演奏は力強いが、土臭さはかなり控えめで、モダンなテイスト。2階にクラリネットのバンダが陣取っていて、びっくり。東響コーラスは暗譜。独唱陣はソプラノにカテジナ・クネジコヴァ、メゾソプラノにステファニー・イラーニ、テノールにマグヌス・ヴィギリウス、バスにヤン・マルティニーク。テノールが印象に残る。おしまいのイントラーダの前にオルガン・ソロ(大木麻理)が入るが、これがハイテンションで最強のカッコよさ。
October 19, 2023