●2日はトッパンホールでハーゲン・クァルテット。三夜にわたる連続公演の最終日を聴く。チケットは全公演完売。この日のプログラムはモーツァルトの弦楽四重奏曲第21番「プロシア王第1番」、ウェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番(大フーガ付き)。新旧ウィーン楽派を組合わせたプログラムという点では、一昨日の内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラと同じ。しかも最初の「プロシア王第1番」に一昨日のピアノ協奏曲第27番と共通する性格を感じ取って、まるで続編を聴いているかのような錯覚を覚える。モーツァルト後期特有の寂しげな長調作品。続くウェーベルンはむせ返るような濃厚なロマン。作品番号のない初期作品だけど、シェーンベルク作品と同様、実際に演奏会で耳にする新ウィーン楽派の作品はロマンティックな曲が圧倒的に多い気がする……。
●後半はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番。終楽章には「大フーガ」を採用。彼らはこの曲をこれまでに何回演奏してきたのだろう。まるで「弦楽四重奏」というひとつの楽器が奏でられているかのよう。成熟し、研ぎ澄まされたベートーヴェン。この曲、後から書かれた軽い終楽章よりも、作曲者の当初の構想通り「大フーガ」で終わるほうがずっと聴きごたえがあるわけだけど、「大フーガ」が始まるときって、なんだか「第九」の終楽章がはじまったみたいな気分になる。速めのテンポでじりじりと白熱する「大フーガ」。ドキドキする。この曲の後に演奏可能なアンコールはない。放心とともに終演。
November 6, 2023