●14日は東京芸術劇場で芸劇リサイタル・シリーズ「VS」Vol.7 河村尚子×アレクサンドル・メルニコフ。ピアノ・デュオの人気シリーズで毎回人選がおもしろい。今回は河村尚子とアレクサンドル・メルニコフが初共演。プログラムも魅力的で、前半が4手連弾でシューベルトの幻想曲ヘ短調(1stメルニコフ)とドビュッシーの交響詩「海」(1st河村)。後半が2台ピアノでラフマニノフの交響的舞曲(1stメルニコフ)。前半のシューベルトとドビュッシーはともにしっとりとして情感豊か。「海」のカラフルなオーケストレーションがピアノのモノトーンに置換されて色味が乏しくなるかといえばそうではなく、緻密な音色表現により豊かな陰影が作り出される。とはいえ、ピアノ1台に名手ふたりは少し「もったいない」感があって、後半のラフマニノフになるとがぜん、のびのびとした開放感が出てくる。ふたりの丁々発止のやりとりがあって、それでいて息はぴったり。デュオならではのダイナミズムも堪能。メルニコフの打鍵は強靭。大ホールの空間に熱気が伝わってくる。
●メルニコフは譜面台に大きめのタブレットを置いて電子楽譜を使用。河村は紙の楽譜。電子楽譜にはいろんな見方があるとは思うけど(本番での信頼性とか)、客席側から見た最大の利点は譜めくりが不要になることだと思う(フットスイッチがある)。脱・譜めくり時代の到来を期待。
●アンコールはラヴェル「マ・メール・ロワ」から「美女と野獣の対話」(1st河村)。河村さんがマイクを持って登場し、メルニコフを指して「美女」、自分を指して「野獣」と紹介していたのがおかしかった。
November 15, 2023