●22日はサントリーホールでアンドリス・ネルソンス指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。ウィーン・フィルとベルリン・フィルの公演が連続していたところに続いてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。今月はトップ・オーケストラのすさまじい来日ラッシュになった。プログラムはワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と「愛の死」、ブルックナーの交響曲第9番。なにしろウィーン・フィルとベルリン・フィルを聴いた直後なので、さすがにインパクトは欠けるかなと思っていたらさにあらず。ワーグナーもブルックナーもすごく味わい深い。香り立つような豊かなサウンド。といっても、ベルリン・フィル的な完全主義の世界とはまったく別路線。均質ではなく、ときに整然ともしていないところから生まれる秩序というか美意識というか。これがドイツのオーケストラだよなと思う一方、ゲヴァントハウス管弦楽団の昔のイメージ(マズアとか)から比べるとずいぶん垢抜けて、明るい音が出ている。ネルソンス、前回聴いたのはサイトウ・キネン、その前はボストン交響楽団だったけど、今回のゲヴァントハウス管弦楽団がいちばん感銘を受けたかな。ここでしか聴けないものを聴けたという喜びがある。
●ブルックナーの交響曲第9番はSPCM補筆完成版の第4楽章を知って以来、第3楽章で終わってしまうと、なにか決定的な要素が欠けてしまうと思っていたんだけど(たとえあの補筆完成版の密度が薄かったとしても)、今回みたいな演奏を聴いてしまうと、やっぱり第3楽章で終わりでいいんじゃないかという気分になる。この日の白眉が第3楽章で、崇高なんだけど、陶酔感にあふれていて、すっかり満たされる。あの第4楽章は「そうじゃねえぞ」って現実に還る音楽なんすよね、自分の理解では。だから第3楽章で終わったほうが、優しいというか、逃避的で気持ちいい。
●しっかりとカーテンコールをくりかえしたが、それでも多くのお客さんが拍手を続け、最後はネルソンスのソロ・カーテンコールに。
November 24, 2023