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November 30, 2023

東京国立近代美術館「棟方志功展」とベートーヴェン

棟方志功 飛神の柵
●東京国立近代美術館の「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」へ(~12/3)。代表的な板画作品から初期の油画や、倭画、本の装幀、包装紙のデザインなど、思った以上に作風が幅広い。大作もあり、迫力満点。上は東北地方の民間信仰「オシラ様」を描いた「飛神の柵」(とびがみのさく)(1968)。

棟方志功
●日本的な題材も西洋的な題材もあって縦横無尽といった感だが、音楽関連でいうとベートーヴェンをテーマにした作品がいくつか。ひとつは上の「歓喜頌」(1952)。「第九」の「歓喜の歌」を題材とした大作で、遠目にはウネウネとした模様だが、近くで見れば裸婦群像だとわかる。本来は六曲一双の作品で、左隻は紛失し右隻のみが残っているのだとか。左隻にはなにが描いてあったんでしょね。

棟方志功
●こちらは「運命頌」(1950)。制作段階からベートーヴェンの交響曲第5番「運命」をテーマにすることが決められていた。大きいので左上の部分を中心に。四対からなるのは第1楽章から第4楽章に対応しているのだろうか。とてもパワフル。各図に彫られているテキストはニーチェの「ツァラトゥストラ」冒頭の文章なのだそう。

棟方志功
●「歓喜自板像・第九としてもの柵」(1963/1974摺)。シリアスなトーンの前2作とはちがって、こちらはカラフルでなんとも楽しそうな図。棟方は制作時に「歓喜の歌」をよく口ずさんでいたという。ご機嫌なムードが吉。「第九」って最後はこんな感じで終わる曲だよなー、と納得させられる。

棟方志功 紙袋と包装紙
●おまけ。「頼まれれば気軽に引き受けた」という包装紙や紙バッグのデザイン。「ああ、これね」ってなる。