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December 11, 2023

務川慧悟 連続演奏会 最終夜

務川慧悟 連続演奏会
●8日は浜離宮朝日ホールで務川慧悟のピアノ・リサイタル。これが連続リサイタルの最終日。なんと、5日間連続のリサイタルなんすよ。それで客席はびっしり。すごすぎる。ロン=ティボーで第2位、エリーザベトで第3位のコンクール歴で実力は認められていても、ここまでの人気ぶりはそんなに伝わってないのでは。この5日間のためにAプロとBプロの2種類が用意されていて、各プロ2公演ずつ行った後、最終日は両プロからの選曲を中心としたプログラムを当日発表するという趣向。そして、最終日は休憩なしの90分予定。だったのだが、曲の合間にトークがたくさん入って、結局21時すぎに。
●当日発表のプログラムはバッハに始まって、バッハ~ブゾーニで終わった。バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」、フランクの「プレリュード、コラールとフーガ」、ドビュッシーの前奏曲集より「亜麻色の髪の乙女」「酒の門」「ヒース」「カノープ」、ショパンのバラード第4番、「英雄ポロネーズ」、ブラームスの作品118の第5曲「ロマンス」、バッハ~ブゾーニの「シャコンヌ」。高い技巧と音色表現の多彩さ、パレットの豊富さが印象的で、作品ごとにふさわしいカラーを作り出す。フランクはオルガン的な荘厳さ、ショパンはパッションが豊か、ドビュッシーは繊細。しばしば深く沈み込むような内省的な表現が聞かれるのが魅力。ブゾーニのイマジネーションで再構築された巨大な「シャコンヌ」は豪壮。
●シリーズ最終日ということで務川さんなりに考えたリサイタルの形が試されていて、曲間では率直なトークが挟まれ、アンコールでは演奏中の撮影が許可される。「儀式化」されがちなふつうのソロ・リサイタルに比べると、ずいぶんアーティストとの距離が近く感じられる。いいところも難しいところもあると思うんだけど(難しいのはトイレ問題。でも若い人にはあまり関係ない)、従来と違うリサイタルの形はきっとあるはず。
●アンコールは2曲。まずシューマン「子どものためのアルバム」第30曲(無題)。スマホの電源を入れる時間まで取ってくれる親切仕様で、演奏中もみんなで客席から撮影。シャッター音があちこちから聞こえてくる。これはお土産のためのフォトセッションだと思えばいい。アンコールをもう一曲。ドビュッシーの「花火」。そこで気づく。舞台上でピアノが花火を打ち上げているが、客席ではわれわれがスマホでパシャ、ピコッ、ビロロロンなど、色とりどりの音の花火を打ち上げている。これはドビュッシーと電子シャッター音の共演なのだ。