amazon
December 15, 2023

トッパンホール ランチタイムコンサート 大瀧拓哉(ピアノ)希望に向かって

大瀧拓哉 トッパンホール●15日の昼はトッパンホールへ。大瀧拓哉のピアノによるランチタイムコンサート。12時15分開演の無料公演、休憩なしの短いプログラムで「希望に向かって」と題されていた。大瀧拓哉は2016年オルレアン国際ピアノコンクール優勝者で、トーマス・ヘルらに師事。現代音楽を得意としつつ古典もレパートリーとしており、今回のプログラムもベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番ホ長調ではじまって、ベルクのピアノ・ソナタ、フレデリック・ジェフスキのノース・アメリカン・バラード第4番「ウィンズボロ綿工場のブルース」(1979)と続く意欲的なもの。「ラインチタイムコンサート」的なふわっとした雰囲気が一切ないシリアスなテイストなのだが、「希望に向かって」とあるようにポジティブなエネルギーに満ち、大きなストーリーを描き出す。
●ベートーヴェンの30番は深遠というよりはフレッシュ、ベルクはパッションとロマンが横溢して白熱。圧巻はやはりジェフスキ「ウィンズボロ綿工場のブルース」。この日の核心。機械的な律動とブルースの対比は、強大なマシーンに立ち向かう労働歌のごとし。おしまいのエルボーが熱い。最後に訪れる静けさは解放なのか。アンコールはバッハ~コルトーの「アリオーソ」。
●余談だけど、ジェフスキを聴いて、マシーン名曲の系譜に思いをはせる。ハイドンの「時計」、ベートーヴェンの交響曲第8番、ドリーブ「コッペリア」、ドヴォルザーク「新世界より」、オネゲル「パシフィック231」、アルカン「鉄道」、マルティヌー「サンダーボルトP-47」、アンタイル「バレエ・メカニック」、モロゾフ「鉄工場」、プロコフィエフ「鋼鉄の歩み」(あるいは「シンデレラ」の真夜中の場面)、ショスタコーヴィチの交響曲第5番(?)……。