●30日は東京オペラシティ第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者コンサートへ。同コンクールの優勝者、カナダのエリック・グオが鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパンと共演。プログラムはモーツァルト「フィガロの結婚」序曲、ショパンのピアノ協奏曲第2番、同第1番。使用楽器は1843年製のプレイエル。ショパン国際ピリオド楽器コンクールの優勝者への興味もさることながら、ピリオド楽器でショパンの協奏曲を聴ける機会そのものが貴重。過去に1回あったかな……というくらい(アヴデーエワとブリュッヘン&18世紀オーケストラ、だったか)。客席は盛況。
●エリック・グオ、2002年生まれとあって本当に若い。多彩な音色による情感豊かなショパンで、パッションも十分。まだ雰囲気はアーティストというよりコンテスタント風。今年で22歳、あらゆる可能性に満ちている。後半、第1番がより楽しめた。フォルテピアノ、音色が無理なくオーケストラのサウンドに溶け込むのが吉。これだけ音色が違うと、モダンピアノはもはや別の楽器だと思うけど、それにもかかわらずモダンピアノを駆使して広大な「ショパン芸術」の世界が築かれているのが再現芸術たる音楽のおもしろいところなんだと思う。
●ショパンのオーケストレーション、あれこれ言われるけど、第1番の第2楽章冒頭とか、とても美しい。
●ショパンの創作史のなかで若き日のほんのひとときに書かれた2曲の協奏曲が、ショパン・コンクールのファイナルの曲目として決定的な影響力を持っていることにアイロニーを感じなくもない。ピリオド楽器のコンクールでもやっぱりファイナルは協奏曲なんだと思ったけど、協奏曲がワルシャワ時代の名曲である以上、ワルシャワのコンクールで大事にされるのは当然か。
●アンコールを4曲も演奏してくれた。ショパンの前奏曲ホ短調op28-4、同嬰ヘ長調op28-13、マズルカ イ短調op59-1、ワルツ第4番ヘ長調op34-3(猫のワルツ)。ソロもたくさん聴けてうれしい。
2024年1月アーカイブ
第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者コンサート
東京都現代美術館 MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ
●東京都現代美術館で現在開催中の「MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ」(~3/3)へ。10歳(!)から30代までの若手アーティスト、11組による約50点を展示。テクノロジーを活用した作品が目立ち、どれも興味深いものであったが、ぐっと来たのはむしろ別の方向性の作品だったかも。
●最高だったのは菅野創+加藤明洋+綿貫岳海による「野良ロボ戦隊 クレンジャー」(2023)。捨てられたお掃除ロボたちが戦隊を組むという発想がおかしすぎる。お掃除ロボごとにキャラクター設定があって、しかもストーリーのある実写映像が作られていて、これが傑作!少し長いけど必見。
●ロボット掃除機って擬人化されがちで、妙に愛嬌があるわけなんだけど、どんどん新機種が出てきて買い替えられる運命にある。あまり耐久性もないし。ウチなんて狭いのに歴代3台のロボット掃除機を導入し、すべてもう引退している(お掃除ロボはクイックルワイパーの機動性と静粛性に敗北した)。もともとロボに対して漠然とした罪悪感みたいなものを抱いているから、この作品が成立するんだと思う。
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●アジアカップ、日本に勝ったイラク代表が決勝トーナメント1回戦でいきなり敗退した。ヨルダン相手に2対1でリードしたのに、独創的なゴールセレブレーションで退場者を出し(場内を走り回った後、ピッチに座り込んで芝を食べて遅延行為で2枚目のイエロー)、アディショナルタイムに2点も失って2対3で逆転負けした(→公式ハイライト)。なにがなんだか。
カーチュン・ウォン指揮日本フィルのプーランク、マクフィー、ドビュッシー他
●26日はサントリーホールでカーチュン・ウォン指揮日本フィル。これまでもアジアを意識したプログラムを組んできた同コンビだが、今回は「ガムラン」がテーマ。カンボジア生まれのアメリカの作曲家チナリー・ウンの「グランド・スパイラル」(日本初演)、プーランクの2台のピアノのための協奏曲(児玉麻里、児玉桃)、バリ島に滞在したカナダの作曲家コリン・マクフィーの「タブー・タブーアン──オーケストラと2台ピアノのためのトッカータ」、ドビュッシーの交響詩「海」という凝ったプログラム。テーマ設定もさることながら、純粋に聴いて楽しく、爽快感のある選曲になっているのが吉。
●最初、プログラムを見て、休憩がどこに入るのかなと思った。ドビュッシーの前ってこと? いやいや、プーランクとコリン・マクフィーの間なんすよ。つまり、2台ピアノの曲が前後半に分かれた。ということは、前半にも後半にもピアノを出し入れするための舞台転換の時間が必要になる。これはかなりの無茶では……と案じたのだが、どちらもカーチュンが舞台上に出てきて、いい感じのトークをしてくれたのだ。ちゃんと内容があって、カジュアルで明るく、話のテンポがよい。こういった能力の高さも今の指揮者って感じがする。英語通訳入り。
●4曲それぞれ楽しんだけど、コリン・マクフィーの「タブー・タブーアン」がインパクト大。曲名は打楽器的な音楽といったような意味らしい。バリ島のガムランを着想源にしているというのだが、ぱっと聴くとポスト・ミニマル的で、いったいいつ書かれたのかと思ってプログラムノートを見たら1936年だった。マジっすかー。すごくカッコいい。
●ちなみに2台ピアノは、前半のプーランクは互いに向き合う形、後半のコリン・マクフィーは横に並べてともに指揮者に向き合う形。ふたりのピアニストが前後半ともに登場する公演もなかなかないが、ふたりの譜めくりが前後半ともに登場する公演もなかなかない、と細かいことを考える。
アジアカップ2023カタール大会 グループリーグ第3戦 ニッポンvsインドネシア
●アジアカップ第3戦の相手はインドネシア代表。前の試合でイラクに力負けしたニッポンだが、この試合に引分け以上ならグループリーグ2位で決勝トーナメントに進出できる。場合によっては負けても3位で勝ち抜ける。逆に勝ったところで1位にはなれない状況でもある(1位はイラクで決定済)。
●ニッポンは前の試合からメンバーを8人も変えてきた。負けたから変えたのか、あるいは第3戦はもともとそういう予定だったのか? 本調子に見えないキーパーの鈴木彩艶は変わらず先発。GK:鈴木彩艶-DF:毎熊、冨安(→渡辺剛)、町田、中山-MF:遠藤、旗手(→南野)、堂安(→伊東)、久保(→佐野海舟)、中村敬斗(→前田大然)-FW:上田。開始早々に上田がペナルティエリア内でファウルで止められてPK、これを上田が自分で決めて先制。上田のPKはパワーがあって豪快。主審はPKを取るつもりがなかったようだが、VARに救われた。明らかなファウル。これでぐっと試合が楽になった。特に前半は選手の連動性が高く、ボールがよく回っていた。プレスにも迫力があり、よく効く。ただ、相手も従来のイメージからすると大幅に強くなっていて、そう簡単には追加点が奪えない。インドネシアは帰化選手も多いらしいのだが、選手のタイプが多様。パワーのある選手も少なくない。足元の技術ではベトナムに及ばないが、インドネシアはすでにベトナムに勝っているのだ。
●後半7分、きれいな崩しからニッポンの追加点。左サイドの中村からオーバーラップした堂安にパス、堂安がグラウンダーのクロスを送り、ファーサイドの上田が余裕で流し込んで2点目。さらに後半43分、上田の強引なシュートが相手にあたってオウンゴール。この3点で勝っていればよかったのだが、すぐ後にインドネシアのロングスローからウォルシュに決められて1点返された。
●結果はニッポン 3-1 インドネシア。勝ててよかったが、ベトナム戦と同様、今や東南アジア勢相手でもそう簡単な試合にはならないことを実感。こちらも強くなったが、あちらもどんどん強くなっていて、差は縮まっている。そして、主審のレベルは相変わらず……。
●結局、グループを2位で通過することになったので、決勝トーナメントは別グループの1位と対戦しなければならない。この時点では韓国が有力で、いきなり日韓戦が実現しそうな情勢だったのだが……なんと、韓国がマレーシア相手に3対3のドローに終わり(公式のハイライト。マレーシアも格段にレベルアップしている)、バーレーンと対戦することになった。ここまでの戦いから見ても、どこが相手でも難敵であることは変わらない。そして、またしても東南アジア勢の進歩を感じる結果に。
尾高忠明指揮大阪フィルの武満徹&ブルックナー6
●22日夜はサントリーホールで大阪フィルの東京定期演奏会。尾高忠明指揮で武満徹のオーケストラのための「波の盆」、ブルックナーの交響曲第6番というプログラム。今年はブルックナーの生誕200年ということで、ただでさえ大人気のブルックナーがますますの超絶大人気作曲家になること確実なわけだが、自分はこれが今年の初ブルックナー。
●武満徹の「波の盆」は同名のテレビドラマのために書かれた音楽。とてもやさしく温かい音楽で、大阪フィルの重心低めな弦の美しい響きが印象的。ノスタルジーを喚起する。冒頭の穏やかなテーマが最後に帰ってくるところで、旅の終わりのような感慨があるのだが、同様にブルックナーの交響曲第6番のおしまいでも第1楽章冒頭主題が回帰するという相似性がこの選曲の理由のひとつか。
●ブルックナーは大阪フィルの本領発揮。重厚でパワフルなサウンドだが、決して力尽くにならないのが吉。端正で音楽の流れがスムーズ。白眉は第2楽章か。丹念に彫琢され、彫りの深い音楽。終楽章は豪壮。ぐいぐいと進む。客席は大喝采で、楽員退出後に尾高さんとコンサートマスターの崔文洙さんのふたりでカーテンコールに。
●昨晩のアジアカップ、日本代表vsインドネシアの話題はまた明日に。
Apple Music Classicalのプレス発表会
●22日はApple表参道でApple Music Classicalのプレス発表会。X(旧Twitter)にも書いたが、アンバサダーとして佐渡裕さん、村治佳織さんも参加する華やかな発表会だった。しかも村治さんの生演奏付き。コンサートホールではなんども聴いているが、至近距離で聴ける機会は貴重。
●Apple Music Classicalのスタートは本日24日より。ようやく日本でもこのサービスが開始されて喜んでいる人も多いと思うが、これが従来のApple Musicとどう違っているのかは、いまひとつこの発表会でもメディアの報道でも伝わっていないような気がする。従来サービスとの決定的な違いは「メタデータがクラシック音楽向けに整備されていること」。これに尽きると思った。これまで音楽配信ではクラシックのメタデータはひどい扱われ方をしてきた(唯一ナクソス・ミュージック・ライブラリーを例外として)。「アーティスト」の欄に作曲家や演奏家の名前が混在していたり、そもそも演奏家名が十分入っていなかったり。クラシックでは、曲名だけじゃだれの曲かわからない(ことが多い)。曲がわかっても、だれの演奏かわからなきゃ意味がない。指揮者の名前があるのにオーケストラの名前がない(あるいはその逆)等々。メタデータがメタメタなので、検索機能がまともに働かないという大きなストレスがあった。しかし、Apple Music Classicalでは、作曲家名、作品名、調、作品番号、演奏者名などがちゃんと区分されて扱われている。本来なら配信サービスの開始とともに整備されているべきものが、ようやく整備されたという意味で、ついにクラシックも第一歩を踏み出した、それくらいのことは言っていいと思う。
●この発表会では、メタデータの話はほんの少しだけで、主にクラシック音楽の楽しみ方など全体的な話が中心。質疑応答も佐渡さんと村治さんが答えるという形だったため、たとえば日本語化がどれだけできているのかとか、ウィーン・フィル等の定期公演を独占的に配信するといった話題について、突っ込んだ質問をするチャンスがなかった。
●Apple Musicの利用者は追加費用なしでApple Music Classicalを利用できる。オーディオ品質が最大24ビット/192kHzのロスレスオーディオ。基本的にCDクォリティ以上という理解。一部音源はドルビーアトモス対応。ただ、プラットフォームは「iOS 15.4以降を搭載したiPhone、iPadOS 15.4以降を搭載したiPad、およびAndroid 9.0(Pie)以降を搭載したAndroidスマートフォン」ということなので、スマホ前提なんすよね。ウチのようにWindows PCからDAC経由でオーディオ装置に出力する形の環境だと、どういう使い方が考えられるのかな……。スマホからダイレクトにイヤホンで聴く人は悩まずに使えばいいけど。
●プレス発表会の作法がいろいろとクラシック音楽業界とは違っていて新鮮な感じ。いかにもAppleらしい、今っぽくてシャレた感じのプレゼンテーション。紙資料等の配布物が一切ない。
●プレス発表会がお昼頃だったので、いったん帰宅し、夜はサントリーホールで尾高忠明指揮大阪フィルのブルックナーを聴いた。その話題はまた明日に(←シェエラザードかっ!)。
アジアカップ2023カタール大会 グループリーグ第2戦 イラク代表vsニッポン
●少し日が経ってしまったが、アジアカップ2023カタール大会、なんと、グループリーグ第2戦で日本代表はイラクに完敗してしまった。そして同グループのインドネシアがベトナムに勝利したため、これでニッポンの1位通過は消滅。2位通過をかけて第3戦のインドネシア戦に臨むことに。
●スコアはイラク 2-1 ニッポン。会場にはイラクサポーターがぎっしり。圧倒的なアウェイの雰囲気のなかで、序盤からイラクが猛然と押し込んできた。その勢いを受け止めきれず、前半5分、左サイドからのクロスをGK鈴木彩艶がパンチングでクリア、しかしこのボールがゴール前に走り込んだアイメン・フセインの目の前に。頭で決めてイラクが先制。この少し前にも鈴木はキャッチできそうなところをセーフティでパンチングで弾いた場面があった。前の試合でもセーブもフィードがよくなかったが、この日も大一番に対する経験のなさが露呈した形。といっても、今大会、国際経験豊富なキーパーはひとりもいないのだが……。
●しかもイラクは先制しても手をゆるめない。ニッポン相手に引いて守る気などさらさらない。強靭なフィジカルを武器にダイナミックなプレイを連発、前半終了間際に左サイドを駆け上がったアルハッジャージがクロスを入れて、伊藤洋輝の前に走り込んだアイメン・フセインがまたも頭で決めて2点目。シンプルだが力強い攻撃。ニッポンはいちばんよくない時間帯に追加点を与えてしまった。後半、イラクのプレッシャーが弱まったものの、ニッポンは交代選手が流れを変えることができず。逆にイラクは終盤に5バックに変更して手堅く試合を進めた。アディショナルタイムにようやくコーナーキックから遠藤が1点を返したが、すぐに笛が鳴って完敗。
●ニッポンの布陣とか選手起用とか、いろいろ言われているが、率直に感じたのはイラクは強いということ。もともとアジア王者の経験もあり、現ガルフカップ王者だけあって、個の能力も高ければ、戦術的な練度も高い。少なくともアウェイでは、ニッポンが負けてなんの不思議もないくらいのレベル。つまり、ニッポンが近年ぐんぐんと強くなったと思っていたら、その間にイラクもベトナムもぐんぐんと強くなっていた。ニッポンがドイツやスペインを破ったように、イラクにもドイツやスペインを破る地力はあると思う。もうアジア全体の水準が上がった。開幕前、ニッポンはアジアカップに欧州組のベストメンバーをそろえなくてもいいじゃないかという論調があったが、2試合を戦ってみて、そんな議論が傲慢以外の何物でもないことがよくわかった。
●メンバーを書いておこう。久保が先発起用された。GK:鈴木彩艶-DF:菅原、谷口(→冨安)、板倉、伊藤洋輝-MF:守田(→旗手)、遠藤航-伊東(→ 前田大然)、南野、久保(→堂安)、-FW:浅野(→上田)。だれが出ようが、この日のイラクに勝てた気がしない。
●昨日はApple表参道でApple Music Classicalのプレス発表会があった。その話題はまた明日に。
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンのブラームス「ドイツ・レクイエム」
●19日は東京オペラシティで鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンのブラームス「ドイツ・レクイエム」。同曲は1868年の作。ピリオド楽器によるBCJの射程がここまで広げられるとは。ソプラノに安川みく、バスにヨッヘン・クプファー。客席はぎっしり、完売の模様。休憩なし。まずシュッツの「主にあって逝く死者は幸せだ」SWV391が演奏され、そのまま続いてブラームス「ドイツ・レクイエム」へ。合唱もオーケストラも響きが清澄。でも音楽は白熱する。こんなにピュアで熱い「ドイツ・レクイエム」は聴いたことがない。「メサイア」とか「第九」みたいに何度も聴けたらいいのにな、と思った。
●この曲、全曲どこを切ってもすばらしいと思うんだけど、鳥肌ポイントを挙げるとしたらどこだろう。第1曲冒頭もすばらしいし、第2曲は極限的なダサカッコよさ。第3曲のフーガの少し唐突な感じで元気が出るところも大吉。まあ、でもクライマックスは第6曲の後半か。終曲の夜が白むみたいな雰囲気もよい。
●ポップアート風ブラームス。AI画伯 DreamStudio作(エンジンはStable Diffusion XL)。
●この日、アジア・カップのイラクvsニッポン戦が重なっていたので、帰宅してから追っかけ再生で試合を観戦。まさかの完敗。その話題はまた明日に。
ジョン・アダムズ指揮東京都交響楽団の自作自演プログラム
●18日はサントリーホールでジョン・アダムズ指揮都響。オール自作自演プログラムで、ジョン・アダムズの「アイ・スティル・ダンス」(2019、日本初演)、「アブソリュート・ジェスト」(2011)、「ハルモニーレーレ」(1984-85)。客席は盛況。本日、同一プログラムで東京文化会館でも公演がある。ジョン・アダムズが日本のオーケストラを振るのはこれが初。ベルリン・フィルはじめ各地のトップオーケストラで自作を指揮しているが、76歳にしてついに貴重な機会が実現。「ハルモニーレーレ」、たぶん、過去に2回聴いていると思うけど(下野竜也指揮の読響、初演者であるエド・デ・ワールト指揮のN響)、作曲者自身の指揮で聴けるとは。漠然と壮年期の姿でしかイメージしていなかったので、ジョン・アダムズがすでに高齢であるという事実に軽い驚きを覚えるのだが、若々しさを保っている。あの複雑な拍子の自作を明快な棒で振り切るバイタリティ、動きのシャープさを維持しているのだからすごい。ゲストコンサートマスターに水谷晃。うれしい。「アブソリュート・ジェスト」の共演者はエスメ弦楽四重奏団。
●3曲ともサンフランシスコ交響楽団が初演した作品。前半、幕開けを飾る「アイ・スティル・ダンス」は重量感のあるサウンドでエネルギッシュ。エレキベースが入る。「アブソリュート・ジェスト」は弦楽四重奏+オーケストラという特異な編成で、ベートーヴェン作品からの断片的な引用が散りばめられた一種のスケルツォ。ベートーヴェンの「第九」、交響曲第4番、弦楽四重奏曲第16番の各スケルツォ楽章などが次々と姿を見せる。ソリストアンコールにベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番からスケルツォの第2楽章。
●で、後半がお待ちかねの「ハルモニーレーレ」。前半が近作、後半が過去のマスターピースというプログラムになっていて、近作はとても洗練されていて、複雑さと明快さを兼ね備え、ぐっとオシャレな感じがするわけなんだけど、でも心をわしづかみにするのは旧作「ハルモニーレーレ」の取り憑かれたようなパッションとマグマのような創造のエネルギー。ミニマル的な書法と後期ロマン派の和声の融合という、本人いわく「一回きりのアイディア」への熱中から生まれた爆発的な傑作。めちゃくちゃカッコいいけど、ぜんぜんオシャレではない。第1楽章、巨大タンカーが宙に浮かびロケットのように旅立つ夢から着想したというエピソードが有名だが、この中二病的な発想と来たら。長い第1楽章の中間部の官能性もたまらないし、ふたたび巨大タンカーが戻ってくるところも熱い。第1楽章のおしまいで思わず拍手をした人がいたけど、気持ちはよくわかる。そういう音楽だと思う。第2楽章が「アンフォルタスの傷」だなんて、もう。第3楽章「マイスター・エックハルトとクエッキー」は正直ピンと来ないタイトルなのだが、クエッキーは娘さんのニックネームなんだとか。
●ずばり、前半はモテる音楽、後半はモテない音楽。だから後半が熱い。休憩時、男子トイレにブルックナー級の大行列ができていて、なんだか腑に落ちた。
●客席は大喝采で熱狂的。楽員退出後も拍手が止まず、ジョン・アダムズとエスメ弦楽四重奏団がいっしょに再登場してカーテンコール。客席には著名音楽家の姿がたくさんあったんだけど、なによりテリー・ライリーがいるというのがすごすぎる。88歳。しばらく前から山梨の田舎で暮らしているらしい。ステージ上にジョン・アダムズ、客席にテリー・ライリー。伝説だ。
SOMPO美術館 ゴッホと静物画ー伝統から革新へ
●SOMPO美術館で開催中の「ゴッホと静物画ー伝統から革新へ」。まもなく閉幕するのだが、先週、ようやく足を運べた。昨年10月17日から今年1月21日までの長期にわたる開催だが、それでも大人気。平日の午後、ネット上で予約して行ったのだが(時間帯を予約する)、コインロッカーの空きがひとつもないという大誤算。さすがゴッホというべきか。しょうがないのでコートを着たまま、荷物を持って鑑賞することに。うむむ。
●大人気の「アイリス」(1890/ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム)。今回の目玉で、隣に並んだ「ひまわり」とともに人が密集。
●こちらはこの美術館の所蔵品である「ひまわり」(1888)。この一枚は常設展示されていて、どんな企画であっても最後に「ひまわり」を見ることになるのだが、作品保護のためなのか、ふだんはガラスケースの奥に薄暗く見えるだけで、ひまわりらしい鮮やかさや明るさがまったく感じられない。これまで何度も目にしてきたが、今回、普通に展示されていたおかげで、はじめて「ひまわり」を目にした気分。これだけでも来た甲斐があったかも。
●なぜかぐっと来る一枚、「靴」(1886/ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム)。相当に履き古した靴で、愛着を感じる……と思ったら、ゴッホは蚤の市で古靴を買って、雨の日に履いて回って泥だらけにして描いたのだとか。なんとなく、自分の靴みたいな感じがしたんすよねー。
●これも静物画のテーマとしておもしろいと思った、「三冊の小説」(1887/ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム)。この3冊がなにかは特定されていて、ジャン・リシュパン「立派な人々」、エドモン・ド・ゴンクール「娘エリーザ」、エミール・ゾラ「ボヌール・テ・ダム百貨店」なのだそう。絵や画家を扱った小説はいくつもあると思うが、小説を本そのものというフィジカルな形で絵にしているのがおもしろい。
●入場時に手荷物検査あり。流行の「環境活動家」による狼藉を警戒してのことなのだろうか。手荷物検査はサッカーの試合とか天覧オペラとかで経験しているが、美術館でも定着するのかも。もっとも、ロッカーが空いていれば、手荷物を持ち込まずに済んだのだが。
川口成彦(フォルテピアノ/ピアノ) 東京オペラシティ B→C バッハからコンテンポラリー
●16日は東京オペラシティのリサイタルホールでB→C(ビートゥーシー)川口成彦(フォルテピアノ/ピアノ)。早々に完売の人気ぶり。このシリーズ、凝ったプログラムが用意されることが多いけど、そのなかでも際立っておもしろいと思った。奏者はひとりだけど、楽器は4台。クリストフォリ1726年(久保田彰復元)、ジルバーマン1746年(久保田彰復元)、ワルター1795年(クリス・マーネ復元)という3台のフォルテピアノとモダンピアノを弾き分ける(ピッチはすべて異なる)。で、モダンピアノは20世紀作品に使用されるのみで、現代曲の3曲はフォルテピアノのための作品。しかも3曲それぞれ違った楽器を用いるという趣向。
●前半がジュスティーニのソナタ イ長調op.1-8、バッハのイタリア協奏曲および「音楽の捧げもの」から3声のリチェルカーレ、J.C.バッハ「バッハの名による半音階的フーガ」ヘ長調、モーツァルト「前奏曲とフーガ」ハ長調K394、後半がカゼッラ「バッハの名による2つのリチェルカーレ」、オネゲル「バッハの名による前奏曲とアリオーソとフゲッタ」、杉山洋一「山への別れ」(2021)、フランク・アグステリッベ「パウル・クレー」(2013)、フルヴィオ・カルディーニの前奏曲とトッカータ「春の始まり」(2024、川口成彦委嘱作品、世界初演)。バッハ、そしてイタリアを軸とした時空を超える音楽の旅。たくさん楽器はあるけど、どれもピアノであってチェンバロではない。バッハ作品もフォルテピアノ(ジルバーマン)で弾く。強弱を前提とした表現になっているのと、フォルテピアノの音色の多彩さが生かされていたのが印象的。前半の曲目では最初のジュスティーニが知らない曲だったんだけど、ピアノのために書いたと明記して出版された初めて作品なのだとか。バッハと同年生まれの作曲家ながら作風は前古典派風で、むしろ息子のJ.C.バッハ寄りというか。そしてJ.C.バッハの「バッハの名による半音階的フーガ」がJ.C.バッハっぽくない曲。というかBACH主題を使うと必然的に半音階的で陰鬱なムードになるのでそうなってしまうのか。
●後半、カゼッラとオネゲルのBACH主題の曲がモダンピアノで演奏されて、前半からの流れで聴くとモダンピアノの音色にレトロフューチャーなテイストが感じられるのが新鮮。懐かしの20世紀。おしまいの3曲がフォルテピアノのための現代音楽という新たな領域を切り拓く。杉山洋一「山への別れ」、印象をキーワードで書きとどめるなら、歩く、孤独、ノスタルジア。アグステリッベ「パウル・クレー」は楽譜が会場に展示されていて、譜面そのものがクレー的。おしまいのカルディーニ「春の始まり」はポストミニマル風のスタイルで書かれており、反復的な曲想とフォルテピアノの音色の相性のよさを発見。疑似電気楽器的(?)な錯覚があるというか。明るいムードでプログラムを閉じたのもよかった。アンコールは2曲。まずはワルターを使用してアルベニスの「旅の思い出」より第6曲「入江のざわめき」。アルベニスのピアノ曲にはギター風の表現がよく出てきて、実際この曲もギター編曲で演奏されたりするわけだけど、これがフォルテピアノだとすっごくギター感が出てくる。もう一曲はバッハの協奏曲ハ長調BWV976よりラルゴ。
●BtoC、オーケストラの公演なんかに比べるとだいたい客席は若いんだけど(特にCの成分が多いと)、この日は年配の方も多く、老若男女問わずといった様子。奏者のファン層がそれだけ幅広いということなのか。プログラムノートに川口さんが、現代音楽においてチェンバロが大きく注目された20世紀に対して「21世紀はフォルテピアノの世紀」と予感すると書いていて、なるほどと思った。
アジアカップ2023カタール大会 グループリーグ第1戦 ニッポンvsベトナム代表
●4年に1度、アジア・チャンピオンを決めるAFCアジアカップ2023カタール大会が開幕。もう2024年になってしまったが、本来は中国で開催されるはずの大会が、コロナ禍の影響でカタール開催に変更された。持ち回りで東アジアで開かれるはずの回が中東開催になってしまい、少し東アジア勢にとっては損になったかも? ちなみに近年の優勝国は、前回から遡って順にカタール、オーストラリア、日本、イラク、日本、日本。なぜかこの大会では韓国が勝てない。
●で、ニッポンの初戦はベトナム戦だったのだが、なんと、テレビ中継がなかった。有料ネット配信のDAZNでのみ生中継。こういうことをしていると、だんだん子どもたちがサッカーを見なくなるわけで、将来のファンの数にも競技人口にも影響を与えそう。一時的な利益はあがるかもしれないが、未来の利益を先食いしているだけのような気がする。
●しかも、これが軽く楽勝するような試合かと思いきや、とんでもなくベトナムが強く、あわやというエキサイティングな試合だったのだ。ベトナムの監督はあのトルシエ。技術がかなり高くて、組織的に洗練されている。ビルドアップも巧み。トルシエのベトナムはハンジ・フリックのドイツより強いと思ったほど。
●森保監督が選んだメンバーは少し意外。GK:鈴木彩艶-DF:菅原(→毎熊)、谷口、板倉、伊藤洋輝-MF:守田(→佐野海舟)、遠藤航-伊東、南野(→久保)、中村敬斗(→堂安)-FW:細谷真大(→上田綺世)。キーパーとトップにフレッシュなメンバーを抜擢したが、これがうまくいかず。想像を超えてベトナムがうまかったためではあるが、ニッポンの前線からのプレスがはまらない。ベトナムの布陣は3-4-2-1(守備時は5バック)できわめてコンパクト。狭いエリアでボールをつないでくる。前半11分にコーナーキックのこぼれから南野がゴールを決めて楽な試合かと思いきや、その5分後にコーナーキックからグエン・ディン・バク(15番)が難度の高いバックヘッドでファーサイドに決めて同点ゴール。この15番の選手は19歳。若さが躍動していた。さらに前半33分、ベトナムのヘディングシュートに対して鈴木彩艶のセーブが甘く、こぼれたボールをファム・トゥアン・ハイが押し込んでベトナムが逆転! この時点でベトナムの強さはもうよくわかったという感じ。試合内容的にもこのまま負けることもあり得ると思った。
●しかし前半終了間際、45分に遠藤の縦パスをフリーで受けた南野が同点ゴール、さらにアディショナルタイムの49分、左サイドから侵入した中村敬斗がペナルティエリア手前45度あたりの得意の角度から、ファーサイドに巻いて入るシュートを決めて逆転。これはもう超絶技巧の美しさ。スーパープレイが出たおかげでふたたびリードを奪えた。前半だけで2度の逆転劇がある試合など、そうそう見られるものではない。ベトナムはこの時間帯での失点が悔やまれるところで、前半をリードして終えられれば、ニッポンの焦りを誘発できたはず。
●後半に入ると、ベトナムは前半のコンパクトさを維持できず、選手間の距離が開いて、こちらもボールを余裕をもって回せるようになった。ニッポンは無理をせずに、ある程度ベトナムにボールを持たせながらチャンスをうかがう展開に。後半40分、ゴール前の細かいパス交換から途中出場の上田が豪快に蹴り込んで4点目。このままニッポン 4-2 ベトナムで試合終了。
●ニッポンの攻撃陣では南野の復調ぶりが際立っていた。2ゴールもさることながら、守備での献身が印象的。左サイドの中村敬斗は三笘の不在(怪我だがメンバーには選ばれている)を感じさせない。右サイドの伊東は見せ場少なめ。鈴木彩艶は失点場面以上に、フィードがよくないのが気になった。細谷が前半のみで下がったのは納得。前線には上田、浅野、前田といったタレントがいる。リヴァプールで主軸となりつつある遠藤航はさすがの貫禄。現在、レアルソシエダの中心選手の久保が先発できないのは傍目には謎だろうが、久保を先発させるには南野か伊東を下げなければならない。途中出場の佐野海舟はJリーグ組ながら実力を発揮。中央2枚は遠藤と守田が鉄板だが、3人目として頼りになる。
●客席に日本人ではなさそうな日本のユニを着たファンをよく見かける。
トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団のシチェドリン&ラヴェル
●14日はNHKホールでトゥガン・ソヒエフ指揮N響。前半にビゼー~シチェドリン編の「カルメン組曲」、後半にラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」と「ラ・ヴァルス」というバレエ音楽プロ。シチェドリンの「カルメン組曲」は聴く機会が意外と多い曲で、編曲者の予想を超えたヒット作になったのでは。主役は打楽器奏者たち。5人の打楽器奏者のためのコンチェルトとでもいうような再創造。演奏は緻密。
●後半の「マ・メール・ロワ」は精緻で色彩感豊か。この日の白眉だと思った。最上質のサウンドで聴いてこそ、おとぎ話の世界を旅することができる作品だと改めて実感。おしまいの「ラ・ヴァルス」がソヒエフ節。粘度と筆圧の高さを感じる。華麗さとグロテスクさが渾然一体となったワルツだけど、いくぶん後者の比重が大きめ。客席の喝采にこたえて、ソヒエフのソロ・カーテンコールあり。
●たとえシチェドリンの工夫を凝らしたアレンジであっても、あらゆる「カルメン」組曲に感じるのはビゼーの天才性。多くの人はこの曲をシチェドリンの「カルメン」と呼ぶ。ヴァイオリン曲であればサラサーテの「カルメン・ファンタジー」、ワックスマンの「カルメン・ファンタジー」、ピアノ曲ならホロヴィッツの「カルメン・ファンタジー」みたいに、だんだんビゼーの名を明記する必要がなくなってきて、「カルメン」という曲名だけで曲が共有されている感じがする。これはもう民謡の領域に半分入っているのでは。作曲家にとって最高の栄誉だろう。
●アジアカップ開幕。驚愕のニッポンvsベトナム戦については明日に。
諏訪内晶子&サッシャ・ゲッツェル指揮国際音楽祭NIPPONフェスティヴァル・オーケストラのモーツァルト
●11日は東京オペラシティで諏訪内晶子とサッシャ・ゲッツェル指揮国際音楽祭NIPPONフェスティヴァル・オーケストラによるモーツァルト。2夜にわたるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲演奏会の一日目で、プログラムはオール・モーツァルト。前半に交響曲第1番、ヴァイオリン協奏曲第1番、後半に「アポロとヒュアキントゥス」序曲、ヴァイオリン協奏曲第2番、ヴァイオリン協奏曲第4番。鮮麗な音色によるソロをたっぷりと堪能。小編成のオーケストラは精鋭ぞろい。ヴァイオリンにコンサートマスターの白井圭をはじめ、シュトゥットガルトSWR交響楽団の首席第2ヴァイオリン奏者エミリー・ケルナー、米元響子、中野りな、落合真子他、ヴィオラ首席に中恵菜、チェロ首席に辻本玲、ホルンに福川伸陽ら、そうそうたる陣容。ゲッツェルのリードのもと、端正で明瞭なモーツァルト。「アポロとヒュアキントゥス」序曲での鋭いアクセントのつけ方がおもしろかった。一公演で3曲もヴァイオリン協奏曲を聴く機会はまずないが、並べて聴くとやはりヴァイオリン協奏曲第4番が出色。
●自身がソリストを務めてヴァイオリン協奏曲もピアノ協奏曲も演奏した作曲家はモーツァルト以降にいるのだろうか。エネスコは名ヴァイオリニストであり、ピアニストとしても卓越していたそうだけど、協奏曲は書いていないと思う。モーツァルトの場合はピアニストとしてウィーンで羽ばたく前、ザルツブルクで宮廷楽団勤務のヴァイオリニストだったから、これらのヴァイオリン協奏曲が生まれたわけで、本人は職務に不満だったようだがこれら傑作が誕生したことを感謝せずにはいられない。第1番が1773年、あとの第2番から第5番はすべて1775年の作曲ということなので、17歳で1曲、19歳で4曲。本当に青春期の一瞬の輝き。そして第2番と第4番の間の跳躍に驚嘆するばかり。できれば、後の成熟期にもヴァイオリン協奏曲を書いてほしかったなと思うけど、それに相当するのがヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲なのか。といっても、それも1779年でここからわずか4年後。すさまじいスピードで人生を爆走している。
セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響、藤田真央のブラームス&シューマン
●10日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。ブラームスのピアノ協奏曲第2番(藤田真央)とシューマンの交響曲第1番「春」というドイツのロマン派師弟プログラム。全席完売の人気ぶり。曲の長さでも作品内容でも前半のほうが重いプログラム。どちらの曲も超ウルトラ級名曲なわりにライブでは難物という印象があるのだが、この日は期待を上回る満足度。ブラームスは冒頭のピアノが予想外にやさしく始まる。藤田真央のピアノは剛ではなく柔のブラームスではあるのだが、雄大なオーケストラに対して一歩も引けを取らず、ピアノ付き交響曲ともいうべき威容を描き出す。オーケストラは整然として澄明な見通しのよいサウンドで、がっしりと芯があって硬質。緊迫感みなぎる第2楽章、第3楽章のつややかなチェロのソロなど、聴きどころ満載だった。喝采に応えてソリスト・アンコールはブラームスの8つの小品op.76より第2曲カプリッチョ。弱音表現に妙味。
●後半、シューマンの交響曲第1番「春」は格調高く推進力も十分。ところどころ緩急の操作にダサカッコいい味あり。厚いオーケストレーションだが、もっさり感なし。この曲、「春」らしい喜びもあるにはあるんだけど、それ以上に「春」のダークサイドに切り込んでいるところがいい。喜びといっしょになって憂鬱もやってくるみたいな「春」。
マリノスのゴールキーパー問題、またしても
●みんな興味ないと思うけど、話だけでも聞いてほしい、またしてもマリノスのゴールキーパー問題だ。昨季、マリノスは開幕直前に守護神の高丘がアメリカに移籍してしまった。それで、ついにオビがチャンスをつかむかと思ったら、ガンバ大阪から一森純をローンで獲得して正GKを任せた。さらに大ベテランの飯倉を復帰させて、控えGKに置いた。オビはなかなかベンチにも入れない。で、どうなったか。
●まず、一森はガンバに帰ることになった。ガンバじゃ第3キーパー扱いだった一森がマリノスで守護神になったところにサッカーのおもしろさがあるが、ガンバに戻って正GKになるのかどうか興味津々。もともと借りた選手なので返さなきゃいけないのはしかたがないが、マリノスに完全移籍させられなかったのは残念なこと。で、不遇をかこっていたオビは案の定、神戸に完全移籍することになってしまった……。ああ、スマン、オビ。マリノスの看板キーパーになると期待していたが、26歳で試合に出れないのだから移籍もしかたない。
●で、代わりに町田からポープ・ウィリアムを獲得した。J2優勝の立役者だ。が、29歳にしてJ1での出場経験はわずか。いきなりマリノスの正GKが務まるだろうか。いやいや、それを言えば昨季の一森だってそうじゃないの。そもそも近年のマリノスのキーパーはみんな抜擢されて飛躍している。高丘陽平、梶川裕嗣、朴一圭。だからポープ・ウィリアムも大活躍するかもしれない。気になるのはリスク回避型の町田とビルドアップ積極参加必須のマリノスでは、キーパーに求める役割がまるで違うということ。
●一チームにキーパーは4人と考えると、来シーズンのマリノスのキーパー陣はポープ、飯倉、白坂楓馬、寺門陸(山口へのローンから復帰)になる……のか? 飯倉の契約更新のニュースがまだなので、実は他に狙っている実力者がいるのかも。いや、きっといる。いるにちがいない。
濱田芳通とアントネッロのモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」
●5日は川口総合文化センター・リリアの音楽ホールへ。今年最初の演奏会は、濱田芳通&アントネッロのモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」。元日から能登半島地震があり、今のざわざわとした気持ちに寄り添うのはウィンナワルツよりもこちらだろう、1610年刊というとてつもなく古い音楽ではあっても。
●この曲の冒頭くらい、これからなにかとてもないものが始まるぞ!っていうワクワク感にあふれた音楽もない。清澄かつ壮麗。多様な音楽が次々と繰り出され、フレッシュで推進力がある。底流にあるのはじわりと熱いパッション。濱田は指揮棒を用いてアンサンブルを率い、ときにはリコーダーを吹きながら作品に命を吹き込む。最後の部分で豊麗な7声のマニフィカトが置かれ、その後でアンティフォナで粛然と終わるのがとてもよかった。客席は大盛況。
●知らなかったのだが、川口総合文化センター・リリアは大規模改修にともなって3月から約2年間、休館となるそう。改修後は新たに建設される美術館と一体となるそうなので、足を運ぶ機会が増えるかもしれない(参照:埼玉新聞)。
「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(鈴木忠平著/文藝春秋)
●しばらく前に刊行されてベストセラーとなったスポーツ・ノンフィクション、「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(鈴木忠平著/文藝春秋)を読んだ。なるほど、これは傑作。野球をまったく見なくなって久しい自分だが、それでも文句なしにおもしろいと思った。中日ドラゴンズで8年間にわたって監督を務め、日本シリーズに5度も進出、日本一にも輝いたという、実績からいえば名監督のはずの落合博満。それなのに「嫌われた監督」。落合時代の中日のキープレーヤーたちに焦点を当てながら、異端の名将の実像に迫る。この本の魅力は落合博満という謎めいた人物像にあるのかと思って読み進めていたが(それも真実なのだが)、それ以上に一見異端と思える落合采配から野球競技の奥深さが伝わってくるところにおもしろさがあるのだと気づく。
●野球の世界には「スポーツ新聞ジャーナリズム」みたいなものが根付いているなというのも痛感した。文体も取材手法も。サッカー本ではあまり見かけないタイプの世界観が描かれていて、そこも新鮮。
●あと、野球は個人競技だなというのも感じる。いや、もちろん団体競技なんだけど、個人成績がはっきり出るので、選手間の序列が容易に可視化される。サッカーだと監督の戦術にフィットするかとか、選手間のケミストリーだとかで選手の序列は変動するけど、野球は投手も野手も個人成績が圧倒的にものを言うなと思った。
半日だけの正月気分
●元日、東京で日本代表vsタイ代表のテレビ中継を見終わったところで、画面で緊急地震速報がなんどもくりかえされて、石川県でとても大きな地震があったことを知る。志賀町の震度7という数字には目を疑った。東京ですら気持ちの悪い揺れがあった。テレビで強い口調で津波からの避難が呼びかけられる。金沢市(私の出身地)は震度5強ということで、正月気分は一瞬にして吹き飛んだ。震度5強は2011年の東京と同じくらいだろうか。余震が延々と続くのも2011年と同じ。これ以上、被害が拡大しないことを祈るばかり。
●そんな状況だったので、報道は能登地震関連一色になり、夜のウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートの生中継は中止に。あの華やかな祝祭感は今の日本のムードからあまりにかけ離れている。1月6日(土)の午後2時から改めて放送されるそう。一応、仕事上の資料でもあるので録画しておくけど……。
●ニッポンvsタイ代表戦について、簡単に記しておくと、大勢の新戦力を試そうとしたところ、まったく機能せず、前半は0対0。後半に欧州組の実力者を投入して5対0で勝った。アジア・カップ開催直前の新戦力発掘といった意味合いがあったのかもしれないが、新たなインパクトを与えた選手はいなかったと思う。タイ代表にはティーラトンやスパチョークがいて、率いるのは石井正忠監督。かつてのタイよりずっと強くなっている。
翠風が、新しい年を迎えるあなたに、自然の力強さと美しさをもたらしますように
●ワタシ:これはAIに描いてもらった架空のポケモン風ドラゴンのイラストです。このキャラクターにぴったりの名前を考えてくれませんか。
Bing AI:このドラゴンの名前には「Verdant Gale(翠風)」という名前がぴったりです。このドラゴンは、緑と白の鱗で覆われ、大きな翼を広げた、壮大で神秘的な姿をしています。目は青く、強い力を持つエレメンタルな性質を示しています。雲と葉の渦が周りに広がっており、その強力でエレメンタルな性質を表しています。このドラゴンは、ポケモンのイラストのスタイルに似ており、ダイナミックでドラマチックな雰囲気を持っています。
この名前は、このドラゴンの緑と白の色合いにちなんでいます。また、このドラゴンが持つエレメンタルな性質を表す「翠風」という言葉が含まれています。
ワタシ:「翠風」はポケモンGo!のキャラクターと同じようにノーマルアタックとスペシャルアタックの2種類の技を持っているとします。それぞれの技の名前を考案してくれますか。
Bing AI:「翠風」のノーマルアタックの名前には、「翠風の一陣」という名前がぴったりです。この名前は、このドラゴンが持つエレメンタルな性質を表す「翠風」という言葉にちなんでいます。
「翠風」のスペシャルアタックの名前には、「翠風の大嵐」という名前がぴったりです。この名前は、このドラゴンが持つ強力なエレメンタルな性質を表す「翠風」という言葉にちなんでいます。この技は、敵に大ダメージを与えることができます。💥
以上の回答がお役に立てることを願っています!
ワタシ:とてもよい名前です。採用しましょう。この「翠風」が2024年の新年のあいさつを述べると仮定して、簡潔なセリフを考えてください。
Bing AI:ありがとうございます!「翠風」が2024年の新年のあいさつを述べるとしたら、以下のようなセリフが考えられます。
「新しい年が、あなたにとって幸せで、健康で、成功に満ちた一年でありますように。」🎉
以上の回答がお役に立てることを願っています!
ワタシ:よい挨拶だと思いますが、「翠風」らしさが欲しいと思います。別案をお願いします。
Bing AI:ありがとうございます!以下のようなセリフが考えられます。
「翠風が、新しい年を迎えるあなたに、自然の力強さと美しさをもたらしますように。」🐲
以上の回答がお役に立てることを願っています!
ワタシ:ありがとう。そちらを採用します。
Bing AI:どういたしまして!「翠風が、新しい年を迎えるあなたに、自然の力強さと美しさをもたらしますように。」というセリフが気に入っていただけたようで、とても嬉しいです。新しい年が、あなたにとって幸せで、健康で、成功に満ちた一年でありますように。🎉