●10日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。ブラームスのピアノ協奏曲第2番(藤田真央)とシューマンの交響曲第1番「春」というドイツのロマン派師弟プログラム。全席完売の人気ぶり。曲の長さでも作品内容でも前半のほうが重いプログラム。どちらの曲も超ウルトラ級名曲なわりにライブでは難物という印象があるのだが、この日は期待を上回る満足度。ブラームスは冒頭のピアノが予想外にやさしく始まる。藤田真央のピアノは剛ではなく柔のブラームスではあるのだが、雄大なオーケストラに対して一歩も引けを取らず、ピアノ付き交響曲ともいうべき威容を描き出す。オーケストラは整然として澄明な見通しのよいサウンドで、がっしりと芯があって硬質。緊迫感みなぎる第2楽章、第3楽章のつややかなチェロのソロなど、聴きどころ満載だった。喝采に応えてソリスト・アンコールはブラームスの8つの小品op.76より第2曲カプリッチョ。弱音表現に妙味。
●後半、シューマンの交響曲第1番「春」は格調高く推進力も十分。ところどころ緩急の操作にダサカッコいい味あり。厚いオーケストレーションだが、もっさり感なし。この曲、「春」らしい喜びもあるにはあるんだけど、それ以上に「春」のダークサイドに切り込んでいるところがいい。喜びといっしょになって憂鬱もやってくるみたいな「春」。
January 11, 2024