●11日は東京オペラシティで諏訪内晶子とサッシャ・ゲッツェル指揮国際音楽祭NIPPONフェスティヴァル・オーケストラによるモーツァルト。2夜にわたるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲演奏会の一日目で、プログラムはオール・モーツァルト。前半に交響曲第1番、ヴァイオリン協奏曲第1番、後半に「アポロとヒュアキントゥス」序曲、ヴァイオリン協奏曲第2番、ヴァイオリン協奏曲第4番。鮮麗な音色によるソロをたっぷりと堪能。小編成のオーケストラは精鋭ぞろい。ヴァイオリンにコンサートマスターの白井圭をはじめ、シュトゥットガルトSWR交響楽団の首席第2ヴァイオリン奏者エミリー・ケルナー、米元響子、中野りな、落合真子他、ヴィオラ首席に中恵菜、チェロ首席に辻本玲、ホルンに福川伸陽ら、そうそうたる陣容。ゲッツェルのリードのもと、端正で明瞭なモーツァルト。「アポロとヒュアキントゥス」序曲での鋭いアクセントのつけ方がおもしろかった。一公演で3曲もヴァイオリン協奏曲を聴く機会はまずないが、並べて聴くとやはりヴァイオリン協奏曲第4番が出色。
●自身がソリストを務めてヴァイオリン協奏曲もピアノ協奏曲も演奏した作曲家はモーツァルト以降にいるのだろうか。エネスコは名ヴァイオリニストであり、ピアニストとしても卓越していたそうだけど、協奏曲は書いていないと思う。モーツァルトの場合はピアニストとしてウィーンで羽ばたく前、ザルツブルクで宮廷楽団勤務のヴァイオリニストだったから、これらのヴァイオリン協奏曲が生まれたわけで、本人は職務に不満だったようだがこれら傑作が誕生したことを感謝せずにはいられない。第1番が1773年、あとの第2番から第5番はすべて1775年の作曲ということなので、17歳で1曲、19歳で4曲。本当に青春期の一瞬の輝き。そして第2番と第4番の間の跳躍に驚嘆するばかり。できれば、後の成熟期にもヴァイオリン協奏曲を書いてほしかったなと思うけど、それに相当するのがヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲なのか。といっても、それも1779年でここからわずか4年後。すさまじいスピードで人生を爆走している。
January 12, 2024