●14日はNHKホールでトゥガン・ソヒエフ指揮N響。前半にビゼー~シチェドリン編の「カルメン組曲」、後半にラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」と「ラ・ヴァルス」というバレエ音楽プロ。シチェドリンの「カルメン組曲」は聴く機会が意外と多い曲で、編曲者の予想を超えたヒット作になったのでは。主役は打楽器奏者たち。5人の打楽器奏者のためのコンチェルトとでもいうような再創造。演奏は緻密。
●後半の「マ・メール・ロワ」は精緻で色彩感豊か。この日の白眉だと思った。最上質のサウンドで聴いてこそ、おとぎ話の世界を旅することができる作品だと改めて実感。おしまいの「ラ・ヴァルス」がソヒエフ節。粘度と筆圧の高さを感じる。華麗さとグロテスクさが渾然一体となったワルツだけど、いくぶん後者の比重が大きめ。客席の喝采にこたえて、ソヒエフのソロ・カーテンコールあり。
●たとえシチェドリンの工夫を凝らしたアレンジであっても、あらゆる「カルメン」組曲に感じるのはビゼーの天才性。多くの人はこの曲をシチェドリンの「カルメン」と呼ぶ。ヴァイオリン曲であればサラサーテの「カルメン・ファンタジー」、ワックスマンの「カルメン・ファンタジー」、ピアノ曲ならホロヴィッツの「カルメン・ファンタジー」みたいに、だんだんビゼーの名を明記する必要がなくなってきて、「カルメン」という曲名だけで曲が共有されている感じがする。これはもう民謡の領域に半分入っているのでは。作曲家にとって最高の栄誉だろう。
●アジアカップ開幕。驚愕のニッポンvsベトナム戦については明日に。
January 15, 2024