●4年に1度、アジア・チャンピオンを決めるAFCアジアカップ2023カタール大会が開幕。もう2024年になってしまったが、本来は中国で開催されるはずの大会が、コロナ禍の影響でカタール開催に変更された。持ち回りで東アジアで開かれるはずの回が中東開催になってしまい、少し東アジア勢にとっては損になったかも? ちなみに近年の優勝国は、前回から遡って順にカタール、オーストラリア、日本、イラク、日本、日本。なぜかこの大会では韓国が勝てない。
●で、ニッポンの初戦はベトナム戦だったのだが、なんと、テレビ中継がなかった。有料ネット配信のDAZNでのみ生中継。こういうことをしていると、だんだん子どもたちがサッカーを見なくなるわけで、将来のファンの数にも競技人口にも影響を与えそう。一時的な利益はあがるかもしれないが、未来の利益を先食いしているだけのような気がする。
●しかも、これが軽く楽勝するような試合かと思いきや、とんでもなくベトナムが強く、あわやというエキサイティングな試合だったのだ。ベトナムの監督はあのトルシエ。技術がかなり高くて、組織的に洗練されている。ビルドアップも巧み。トルシエのベトナムはハンジ・フリックのドイツより強いと思ったほど。
●森保監督が選んだメンバーは少し意外。GK:鈴木彩艶-DF:菅原(→毎熊)、谷口、板倉、伊藤洋輝-MF:守田(→佐野海舟)、遠藤航-伊東、南野(→久保)、中村敬斗(→堂安)-FW:細谷真大(→上田綺世)。キーパーとトップにフレッシュなメンバーを抜擢したが、これがうまくいかず。想像を超えてベトナムがうまかったためではあるが、ニッポンの前線からのプレスがはまらない。ベトナムの布陣は3-4-2-1(守備時は5バック)できわめてコンパクト。狭いエリアでボールをつないでくる。前半11分にコーナーキックのこぼれから南野がゴールを決めて楽な試合かと思いきや、その5分後にコーナーキックからグエン・ディン・バク(15番)が難度の高いバックヘッドでファーサイドに決めて同点ゴール。この15番の選手は19歳。若さが躍動していた。さらに前半33分、ベトナムのヘディングシュートに対して鈴木彩艶のセーブが甘く、こぼれたボールをファム・トゥアン・ハイが押し込んでベトナムが逆転! この時点でベトナムの強さはもうよくわかったという感じ。試合内容的にもこのまま負けることもあり得ると思った。
●しかし前半終了間際、45分に遠藤の縦パスをフリーで受けた南野が同点ゴール、さらにアディショナルタイムの49分、左サイドから侵入した中村敬斗がペナルティエリア手前45度あたりの得意の角度から、ファーサイドに巻いて入るシュートを決めて逆転。これはもう超絶技巧の美しさ。スーパープレイが出たおかげでふたたびリードを奪えた。前半だけで2度の逆転劇がある試合など、そうそう見られるものではない。ベトナムはこの時間帯での失点が悔やまれるところで、前半をリードして終えられれば、ニッポンの焦りを誘発できたはず。
●後半に入ると、ベトナムは前半のコンパクトさを維持できず、選手間の距離が開いて、こちらもボールを余裕をもって回せるようになった。ニッポンは無理をせずに、ある程度ベトナムにボールを持たせながらチャンスをうかがう展開に。後半40分、ゴール前の細かいパス交換から途中出場の上田が豪快に蹴り込んで4点目。このままニッポン 4-2 ベトナムで試合終了。
●ニッポンの攻撃陣では南野の復調ぶりが際立っていた。2ゴールもさることながら、守備での献身が印象的。左サイドの中村敬斗は三笘の不在(怪我だがメンバーには選ばれている)を感じさせない。右サイドの伊東は見せ場少なめ。鈴木彩艶は失点場面以上に、フィードがよくないのが気になった。細谷が前半のみで下がったのは納得。前線には上田、浅野、前田といったタレントがいる。リヴァプールで主軸となりつつある遠藤航はさすがの貫禄。現在、レアルソシエダの中心選手の久保が先発できないのは傍目には謎だろうが、久保を先発させるには南野か伊東を下げなければならない。途中出場の佐野海舟はJリーグ組ながら実力を発揮。中央2枚は遠藤と守田が鉄板だが、3人目として頼りになる。
●客席に日本人ではなさそうな日本のユニを着たファンをよく見かける。
January 16, 2024