●11日は東京オペラシティで18世紀オーケストラ。「The Real Chopin × 18世紀オーケストラ」と銘打ち、ユリアンナ・アヴデーエワ、トマシュ・リッテル、川口成彦の3人がフォルテピアノでショパンを演奏する。アヴデーエワは2010年のショパン・コンクール優勝者、トマシュ・リッテルと川口成彦は2018年の第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの1位と2位。楽器はプレイエル(1843)。昨日と本日の2日間にわたって開催されるが、初日のみ足を運ぶことに。
●プログラムは前半にモーツァルトの交響曲第40番、藤倉大のBridging Realms for fortepiano(川口成彦)、ショパンの「ポーランドの歌による幻想曲」(川口成彦)、演奏会用ロンド「クラコヴィアク」(リッテル)、後半にピアノ協奏曲第1番(アヴデーエワ)。最初に交響曲が入っている分、長めの大盛りプログラム。モーツァルトは立奏。指揮者は置かず。ピアノはオーケストラに囲まれて客席にまっすぐ顔を向ける方向で配置。要所でコンサートマスター、ときにはソリストが拍子を取る。同じ楽器であるが三者三様のショパン。前半の初期作品はモダン楽器でもほとんど聴くチャンスがなく、貴重な体験。こうして聴くと、ピアノ協奏曲に至る飛躍の大きさを感じずにはいられない。ふたりのフォルテピアノ奏者の演奏をもっと聴きたくなる。藤倉大のBridging Realmsは第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールとKajimotoの共同委嘱作品で、今回が日本初演。たゆたうような反復的なパッセージから清爽な詩情が立ち昇る。続くショパンへの前奏としてもスムーズに機能する。川口さんにぴったりの曲だなとも感じる。
●アヴデーエワによるショパンのピアノ協奏曲第1番を聴くのはたぶんこれが3度目。最初はコンクール優勝直後のN響と、次はブリュッヘン指揮の18世紀オーケストラと。なので新味はないかと思いきや、堂々たる貫禄のショパンですこぶる雄弁。今まででいちばん好印象。最初に聴いたときはまるで学生みたいで頼りなげだったけど、いまやすっかり確信を持った弾きぶりで主導権を握る。ピリオド楽器で聴く協奏曲は、色彩感豊かで、なんの不足もなく自然。これが The Real Chopin だと言われたら、その通りなんだろうと思う。
●「本当のショパン」があるとすると、「ニセのショパン」もあるのだろうか。あるいはショパン本人が弾いたものだけが本物とか。いや、タイムトラベルしたショパン本人が弾いてくれても、現代のピアニストの演奏のほうがいいな、となる可能性もあるのか。