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March 21, 2024

東京・春・音楽祭2024 ルドルフ・ブッフビンダー ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会IV

東京・春・音楽祭 2024
東京・春・音楽祭2024が3月15日に開幕。この音楽祭もこれで第20回。もうそんなになるとは。今回、ルドルフ・ブッフビンダーがベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を開いている。全7回のシリーズ。19日の第4回に足を運ぶ。プログラムは前半にソナタ第6番へ長調、第24番嬰ヘ長調「テレーゼ」、第16番ト長調、後半に第29番変ロ長調「ハンマークラヴィーア」。
●ブッフビンダーはこれまでにベートーヴェンのソナタ全曲演奏会を60回以上も行っているのだとか。そんな人はほかにいないだろう。で、32曲のソナタを全7回にどう割り振るかは、何十年もかけて全曲演奏会をくりかえしているうちに固まってきたのだそう。この日の組合せは、前半はユーモアの要素の強い作品、後半は超大作というコントラストを際立たせたプログラム。まったく自然体でピアノに向かい、気負いなくどんどん弾く。テンポは終始速め、あるいは猛烈に速い。飄々とした雰囲気は、特に第16番の終楽章で効果的で、茶目っ気のあるコーダに客席から笑いが漏れた。
●さすがに「ハンマークラヴィーア」はじっくり攻めるだろうと思いきや、これまた猛烈なテンポで始まったのにはびっくり。これが77歳のピアニストの弾くベートーヴェンとは。年輪を重ねたからといってテンポが遅くなることもなく、深遠さを気どることもない。もちろんキレッキレとはいかないが、作品がすっかり手の内に入っており、停滞することがない。で、「ハンマークラヴィーア」の後にアンコールはないだろうなと思ったら、普通にあった。こういうところもブッフビンダーらしい感じ。ソナタ第18番の終楽章だったかな。
ルドルフ・ブッフビンダー
●おしまいのカーテンコールのみ、撮影が解禁されていた。ありがたい。ブッフビンダーについては東京・春・音楽祭のサイトに取材記事を書いている。これは単独インタビューではなく、リモートでの共同記者会見をまとめたもの(自分はプロモーション用インタビューの仕事は基本的にしないんだけど、記者会見なら可能なかぎり出る)。ブッフビンダーはどんな質問に対しても実際的な答えを返す人で、思わせぶりな物言いをしないところが立派だと思った。