●この5月に山田和樹指揮モンテカルロ・フィル来日公演が開催される。ソリストは藤田真央。プログラムは2種類あり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番&ベルリオーズの幻想交響曲他と、ラヴェルのピアノ協奏曲&サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」他。
●で、少し前の話題だけど、2月5日に日本公演に向けた記者会見が行われたので、ZOOMで参加。壇上には芸術監督兼音楽監督である山田和樹さんひとりが座って語る形式だったのだが、語り口が率直で、とても興味深い話だったので記しておく。「今回のツアーをとてもうれしく思っている。うれしいという言葉の背景にはいろんな思いがつまっている。現在、このオーケストラの音楽監督として8シーズン目を迎えているが、最初は3年契約で、そこから契約を延長してきた。通常だったら最初の任期で辞めなければならなかったような出来事があった。今にして思うと当時、自分は音楽監督の仕事をまったくわかってなかった。モナコはフランス以上にフランス語の国で、英語の併記を許してくれない。言葉の問題による誤解など、いろんなことがあった。はっきり言えば、オーケストラは最初の延長を望んでいなかった。最初の延長時は仲が良くなかったけど、誤解を解いていこうとひとつひとつ自分ががんばることで、楽団員も心を開いてくれるようになった。モナコでは音楽監督の権限が強い。(首席指揮者を務める)バーミンガム市交響楽団などは楽員の採用時に出席の義務もなく、音楽面に集中していればいい。でも、モナコではまったく違う。採用権も拒否権もある。一方で組合も強い。人事に着手したら猛反発をくらった。でも今では苦労をともにしたなどという単純な言葉ではくくれないような仲間になった」
●「バーミンガムでは楽員はみんなカズキと呼ぶけど、モナコはだれひとりそう言わない。メートル・ヤマダと呼ぶ。モナコの気質は、まったく21世紀のオーケストラのものではない。気質も音も時間が止まってしまっているようなところがある。モナコという街がそうなっている。サウンドも20世紀そのまま。よくオーケストラの個性がなくなったといわれるけど、古き良き時代の音がそのまま残されている。団員のほとんどがフランス人で、特に管楽器は100パーセント近くがフランス人。彼らが最高の演奏をしたときは世界一のオーケストラだと思うが、そのスイッチがどこにあるかはわからない。でもスイッチが入れば、まちがいなく世界一のオーケストラになる」
●あと、印象的だった言葉はこの一言。「(自分が)音楽監督であれゲストであれ、日本のオーケストラであれ海外のオーケストラであれ、そのオーケストラのいちばんいいところを出したいと思っている」。
April 3, 2024
山田和樹指揮モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団記者会見
photo © 松尾惇一郎