●五輪最終予選を兼ねたU23アジアカップ準決勝は、U23ニッポン対U23イラク。準々決勝のカタール戦は「負ければ五輪出場権を失う」という厳しい状況だったが(選手たちは尋常ではない緊張を感じたとか)、この準決勝は勝てば出場決定、負けてもプレイオフがある。そんな余裕を反映してか、選手たちはのびのびとプレイ。相手にも同じことがいえるわけで、見ておもしろい好ゲームになった。結果は2対0で完勝、オリンピック出場を決めた。決勝の相手はサウジアラビアを下したウズベキスタン。
●大岩監督率いるU23ニッポンは4-3-3の布陣。対するU23イラクは本来の4バックではなく、ニッポン対策で5バックを敷いた。有名クラブ所属の選手が多いフル代表ならともかく、U23相手でもニッポンに対して守りを厚くしてくるのは少々意外。ただし、ディフェンスラインは深くなく、「引いて守る」という戦い方ではない。結果的にこれがニッポンに幸いした面はあって、中盤で比較的自由を得た藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)が無双状態。ラインの裏のスペースをたびたび脅かす展開に。藤田はマリノス時代から足元の技術の確かさと視野の広さがすばらしいと思っていたが、順調に成長を遂げている模様。近い将来、フル代表に定着するのでは。あとは左ウイング平河悠(町田)の突破力も印象的。ゴールは細谷真大と荒木遼太郎。イラクでは7番のアリ・ジャシムの突破に迫力あり。
●イラク相手となるとフィジカルではかなわないかと思いきや、このU23は高さと強さで負けていない。大きいのだ。特に序盤は当たりを強くしようと申し合わせていたのでは。技術も高く、スピードもあり、本当にたくましい好チーム。
●でも、このチームから本番のパリ五輪に選ばれる選手は何人いるんだろう。代表ウィークではないので、このチーム自体がベストメンバーではなく、本番となればほかに何人もの有力候補がいる。しかも久保建英みたいなフル代表の選手も入ってくるかもしれない。そして、オーバーエイジ枠3人が加わる。しかも五輪の登録枠はわずか18人。出場権を獲得したこのチームとオリンピックのチームの顔ぶれが大幅に異なることは必至。この大会が五輪予選を兼ねない、純粋なU23アジアカップだったらいいのにな……と思わずにはいられなかった。世の中で「オリンピック」という存在があまりに大きいため、こんな歪んだ仕組みができてしまっているが、本来ならオーバーエイジ枠などあってほしくない。オリンピックがU23の大会ではなく、O35のマスターズ的な大会になってくれればいいのに……といつも思う。
May 1, 2024